看護師が消化器内科に転職する6つのポイント。仕事内容とメリット、デメリット

看護師のK美
K美 45歳(女性)
看護師
総合病院急性期外科勤務
職歴:腎臓内科3年、消化器内科5年、呼吸器内科6年、循環器内科5年

こんにちは!
ベテラン看護師のK美です。
今回は、消化器内科の現場で働いてみないとわからない内情についてお話しします。
消化器内科ってどんなとこ?といった素朴な疑問から、そこで働く看護師が感じるメリットデメリットまで。
消化器内科に転職したいあなたに知っていただければ幸いです!

では、さっそく。
消化器内科で扱っている疾患から。
お答えしましょう!

消化器内科で必要な知識

消化器内科は、消化器(食道、胃、小腸、大腸)、肝臓、胆のう、膵臓を対象に治療する科です。
扱う臓器が多いだけでなく、どれもカラダの要となる重要なものばかりですね。

では、具体的にどんな疾患があるのか。
押さえておきましょう。

消化器内科の疾患
疾患は主に以下の通りです。
・肝炎、肝硬変、転移性肝がん
・食道炎、食道がん
・胃炎、胃潰瘍、胃がん
・十二指腸潰瘍
・大腸ポリープ、大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病
・小腸疾患
・胆石、胆管結石、胆のう炎、胆管炎、胆のうがん、胆管がん
・自己免疫性膵炎、急/慢性膵炎、膵石、閉塞性黄疸
など

うーん。
やはり、消化器はどれもヘビーな疾患ばかりですね。
扱う臓器が多い分、自然とがんの種類が多くなるのもうなずけます。

ではここで、少し視野を広げて。
消化器内科全体の特徴をつかんでみましょう。

消化器内科の特徴

特徴は3つあります。

1.疾患が幅広い
消化器内科で扱う部位は、胃、食道、十二指腸、大腸、胆のう、肝臓まで体にとって肝心要!
有名どころが勢ぞろいしています。
そのうえ、疾患ごとに軽度から重症度の高いものまであるため、とにかく幅広いです。

「疾患が多すぎて、何から始めればいいのかわかりません・・・」
このように悩む看護師はけっこういます。
まず1つひとつ臓器ごとに知識を深めましょう。
大腸を例にとってみると、まず潰瘍やポリープについて勉強し、更にがんへと知識を広げていきます。
疾患を学ぶと、自然と大腸ファイバーや便の潜血検査のしくみも理解できます。
具体的に、便の観察方法や検査だしのやりかたまで覚えられます。
この観察や検査だしは大腸だけでなく、他の臓器に共通していたりします。
つまり「1つ臓器のことがわかると、全体が見えてくる!」ということです。

わたしも、最初は消化器全体をおさえようと必死でした。
でも、すぐにギブアップ(汗)
次に、1つずつ臓器を順番に覚え、2つか3つ目ぐらいになって、パッと全体が見えるようになった瞬間を今でも覚えています。
だから、焦らず1つ1つ。覚えていけばいいんです!

2.がん患者さんが多い
消化器のがんは日本人のがん死因トップ5を占領するほど、がん患者さんの多い科です。

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それぞれのがんに対する知識から、治療方法、副作用まで幅広くて奥深い知識が必要です。

3.急変が多い
消化管出血、胆管炎、慢性肝炎や肝硬変は急変が多い上に重症度も高いです。
食道静脈瘤の破裂や胃潰瘍、胃がんの患者さんの吐血。
大腸憩疾出血、ESD後の下血。
このような場合、看護師は大量の血を前に、緊迫した空気の中、対応を迫られることも多いです。

ここまでで、消化器内科の特徴をザックリつかんでいただければOKです。
次はいよいよ、消化器内科で働く看護師の仕事について。
じっくり、みてみましょう。

仕事内容

消化器内科の通常業務は、一般的な診療科と違いはありません。
バイタルチェック、内服薬の与薬、点滴、食事や排せつの介助、清潔ケア。
これに、観察、検査の介助が入ってきます。

ただし!
その中でも、消化器内科特有の仕事が3つあります。
次で、押さえておきましょう。

1.各検査の介助
消化器疾患の検査は多様にあるので、検査方法を理解し、介助を行うのが看護師の仕事です。
具体的には、CT、MRI、超音波検査、内視鏡検査、透視検査、便潜血検査の介助があります。
臓器によっても検査方法は異なります。
CTや、MRIはよくある検査方法ですね。
でも、内視鏡検査はちょっと・・・
ちょっと?いや、かなり気になりますよね。
ではもう少し、具体的にみてみましょう。

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引用:帯広協会医院より

内視鏡を使った検査は日常的にあります。

<検査の当日まで>
看護師は患者さんに、検査の流れや注意事項(アルコール、食事、運動、服薬の制限)を説明しておきます。

<検査当日>
看護師は検査の準備作業をメインに行います。
患者さんに対して、下剤や消泡剤の服薬の介助ですね。
検査中は、患者さんのバイタルを中心に全身状態を観察します。

検査の流れはザッとこんな感じです。

内視鏡は今述べたような検査や投薬だけでなく、治療にも使われます。
たとえば、胃や大腸の粘膜層にとどまっているような早期がんに対して病変部を治療します。
外科手術と比べると内視鏡治療は、患者さんへの負担が少ないこともあって積極的に行われています。

2.がん治療の介助
看護師が行うのは、主にがん治療を受けた患者さんの副作用対応です。
消化器内科は、手術がないかわりに、化学療法や放射線治療でがんの治療を行います。
それぞれ単独で行う場合もあれば、混合で行う場合もあります。
疾患や患者さんによって、副作用もさまざまです。
吐き気や嘔吐、発熱、下痢、口内炎、むくみ、皮膚の色素沈着といった目で見てわかるもの。
悪心、 倦怠感、食欲不振、味覚障害といった一見わかりにくいもの。
尿量や白血球の減少のデータからわかるもの。
きちんと副作用をわかったうえで、治療後の患者さんの症状をこまめに観察し、苦痛を和らげることが大切ですね。

また、医師から治療に関する説明はありますが、患者さんによっては理解が難しい方もいらっしゃいます。
理解はしていても、大きな不安を抱えている場合もあります。
看護師は、患者さんの表情や会話の内容からどれぐらい理解しているかを把握して、あまり理解できていないな。と感じたときは患者さんが納得できるまで説明します。
そうやって、さらに不安の軽減に尽力します。

3.食事、排泄のケア
看護師は、装具のついた患者さんを介助します。
主な装具として胃瘻、ドレーン、ストーマがあります。

胃瘻(PEG)は、口から食事がとれない患者さんに対して、腹部から胃までカテーテルを通して直接栄養を送り込む方法です。
胃瘻造設は内視鏡を使って20分程で終わります。
造設後は定期的にカテーテルの交換が必要になるため、看護師は交換用のロッドが動かないよう医師を介助します。
交換後は、出血状態や、 瘻孔周辺の皮膚トラブルの有無、痛みの有無を観察します。
また、薬剤を投入する際は、看護師が注入する薬剤の準備をし、カテーテルに流し込みます。
その後、バイタルや呼吸の変動、ADLの把握、吐き気や嘔吐腹痛の有無、排便状態の確認を行います。

ドレーンは、体内の排液を保管する装置です。
排液バッグの交換は毎日行います。
その際に、廃液の色、量、臭いの観察を行い、患者さんのバイタルチェックで全身状態をみます。
ドレーンを固定する際は、ねじれや圧迫、抜去の危険性がないか注意しながら行います。

ストーマは、尿や便を自分で排出できなくなった場合に、尿管や腸管を直接腹壁に持ってきたリ、膀胱や腎臓に管を通して排出させる方法です。
尿路ストーマ、消化管ストーマの2種類で、排泄物をためておく装具が必要になります。
看護師は、患者さんの観察と指導を行います。
周辺の皮膚の状態を観察し、ストーマ袋から排出物を破棄する方法や装具の交換方法を患者さんに指導します。

そのほか、食事や生活指導も看護師の仕事です。
胃の疾患を患った患者さんに対しては、規則正しい食事を促し、喫煙やアルコール、カフェインの摂取を控えるよう指導します。

4.ターミナルケア
消化器内科には消化器がんの患者さんが多いこともあり、看取り対応が入ってきます。
特にターミナルの看護は、患者さん一人ひとりと深く関わることが増えます。
看護師は、患者さんだけでなく、ご家族も含めたケアを心がけなければなりません。
そのほかには、疼痛コントロールのため麻薬も扱います。
麻薬の取り扱い方や、副作用についても熟知しておきましょう。

いかがでしたか?
消化器内科の仕事は、どれも難しいそうだけど、やりがいのあるものばかりでしたね。
ストーマや胃瘻をしている患者さんに対するケアや、疼痛コントロールまで、ただ幅広いだけでなく、奥深さもあります。
では続いて、どんな看護師たちが働いているのか?
みてみましょう。

どんな看護師が働いているの?

消化器官に関する一通りの知識を学び、専門性を身に付けるだけでなく、アセスメント力も鍛えたい看護師が多いです。
消化器内科にいる患者さんの症状はさまざまです。
胃の痛み、胃もたれ、膨満感、胸の痛み、胸やけ、のどのつかえ、のどの違和感、食欲不振、嘔吐、腹痛、下痢、便秘、下血など。
症状や検査データを分析できるぐらいアセスメント力をつければ、どの科に行っても通用します。
だから、たとえ覚えることはたくさんあっても、あえて消化器内科を選ぶ人は多いんです。
そのうえ、がんの多い科でもあるため、患者さんの痛みや苦しみを和らげるといったターミナルケアに興味のある人も多いです。

ほほー。
消化器内科は大変だけど、どの科でも通用するだけの経験ができる。
だから、あえて行きたいと思う看護師は多いんですね。
なるほどなるほど!
やっぱり、消化器内科は魅力的です。
続いて、その魅力をまとめてみましたのでチェックしておきましょう。

消化器内科のメリット

・消化器疾患の幅広い知識が身につく。
・検査や治療のレパートリーが多く、内視鏡を中心に専門知識が身につく。
・放射線科や外科との連携が多く、幅広い人間関係の中で仕事が出来る。
・急変時の判断力や対応力が身につく。
・がんの知識(化学療法や放射線治療、副作用の知識やターミナルケアなど)が身につくため、他の科でも通用する。
・検査の介助やターミナルケアが多い分、患者さんと関わる機会も多い。

良いところだけでなく、悪いところも気になりますよね。
次で、押さえておきましょう。

消化器内科のデメリット

・消化器全般の知識を一通り覚えるのが大変だと感じる。
・急変時の緊迫した空気がストレスになる場合もある。
・大量の吐血や下血が多いため、ストレスを感じる場合もある。
・医師の検査介助が多いため、合わない医師との人間関係で悩む場合もある。

消化器内科の良い面、悪い面、両方把握できましたね。
では、いよいよ、これで最後になります。
わたしからのメッセージ。
聞いてください(笑)

消化器内科に転職したいあなたへ

消化器内科は、主要な臓器を多く扱うため、疾患、検査、治療、どれをとっても幅広い知識が身につく場所でした。
そのうえ、大腸や胃は重症化しやすく、吐血や下血を伴った緊迫した場面が多いこともわかりました。
他に、がん患者さんの割合が多く、化学療法や、放射線治療にともなう副作用も理解しておかなければなりません。
その反面、ターミナルの患者さんを中心に、看護師は一人ひとりの患者さんのことを深く考えることも求められます。

消化器内科で一通りの看護をやりこなすには、いくつかのハードルを乗り越えなければなりません。
でもその分、他の科に行っても怖いものなしの看護師になれる科です。
転職したいと悩むなら、ぜひ1度チャレンジしていただきたい!

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