看護師から転職したときの絶望感

佐竹さん(33歳・女性・東京都・正看護師)

看護師からの転職なんて簡単だと思っていた。
仕事なんて選ばなければいくらでもある。

実際に私は、看護師を辞めて色んな仕事で働いた。

だけど看護師を辞めるってのは、そんな簡単な話じゃなかった。
どん底の生活を経験し、価値のない自分の惨めさを知り、将来に絶望することになった。

この経験を「同じ失敗をしてほしくない」という意味で伝えてみたくなった。
興味があったら読んでみてください。

あなたは看護師に向いてない

新卒で入職した急性期病棟でのこと。

私は看護部長から、
「あなたは看護師を辞めたほうがいい」
と言われた。


(私、上段の左から2番目)
(師長、下段の一番左)

それからの5年間、わたしは看護師に向いてないっていつも思っていた。

同期が簡単にできることでも、私にはできない。
普通なら10分で終わる処置に、30分かかる。
毎日「すみません」「申し訳ありません」「ごめんなさい」と謝罪してばかり。

同期に優秀な看護師が多く、いつも比べられ本当に惨めだった。
後向きでいつも誰かの後ろに隠れていた。
当然やる気なんて無い。

看護師としての自信は一気に消えてしまった。

それからは、叱られてばかり。

だからミスが異常なまで怖くなった。
ミスしないよう集中しすぎて、ナースコールが聞こえなかったり、
慎重になりぎて時間が無くなって焦った結果、点滴の滴下調節も確認せずに多量の輸液投与なんていうミスをしたり、
患者さんの容態が悪化しても、先輩に報告するのが苦痛で、誰にも報告できなかったり。

看護師としては最低かもしれない。

部長には辞めろと言われ、先輩や同期たちから見放され、後輩には無視され、孤立して、最悪だった。

それでも5年間必死に耐えてきた。

でもついに限界を迎え看護師を辞めようと決意する。
看護師以外なら上手にやれると思える若さもあり、携帯ショップに転職した・・・。

看護師を辞めたらどうなるのか?


携帯ショップは楽だった。
言われたことだけをやればいい。
良くも悪くもマニュアル通り。
色んな客が来るけど、事務的に押し進める。

看護師とは大違いだった。
看護師は、イレギュラーなことに対処できるほど優秀。
だけど携帯ショップは、マニュアル通りにできる者ほど優秀だった。

昔は患者さんの急変、インシデントにスタッドコール・・・。
予期せぬに緊急事態にいつも怯えていた。

その苦しみから解放され、ちょっとした幸せを感じた・・・。

あなたはロボットになれますか?

私は携帯ショップに転職して、ロボットになった。

マニュアルを忠実にこなすだけのロボット。
マニュアルを外れることは許されない。

お客さんからの罵声もマニュアル通りに対応する。
「おい!」
「ネエチャン!」
「おまえ!」

怒鳴られるたびに汗が吹き出し、顔が赤くなり、頭は真っ白になる。
だけどロボットを演じなくてはいけない。
マニュアル通り事務的に。

今思えば病院だと患者さんが怒れば、誰かが守り助けてくれた。
主任だったり、先輩だったり、後輩だったり・・・。

でも携帯ショップでは誰も助けてくれない。
マニュアルに沿って事を進めるか、サポートセンターに指示を仰ぐだけ。

携帯ショップの店員に求められるのは、感情を無くすこと。
ただ言われたことだけを行えばいい。
客からの罵声に反応せず、落ち込んだり、泣く必要もない。

壊れたら捨てられ、また新しいロボットがやってくる。
その毎日だった。

そこに「やりがい」なんて洒落た言葉は一切ない。

貧困の衝撃


携帯ショップの給料はとにかく安かった。

基本給が16万円。
保険と税金を引かれて、手取り12万円。
家賃と水道光熱費、食費、携帯代、交通費などの生活費を使い、残り1万円。

毎日10時間も働いて、お客さんに罵倒され、心を切り売りしても、時給800円だと手元に残るのはたったの1万円。

1万円じゃ貯金ができない、遊びに行けない、美味しいモノなんて食べられない。
ランチやショッピングは過去の話。
朝はパン1枚。
お昼はペットボトルに入れたお茶と、コスパの良いスティックパン。
夜はケチャップパスタ、醤油そうめん、焼うどんをローテーション。

休日は友達と遊ぶこともできず、ツタヤでDVDを借りるのが唯一の楽しみだったけど、それを見ながら食べるポテチを1袋買うのに1時間迷うくらいお金に困っていた。

今思えば本当にギリギリで余裕の無い毎日。
何かにつまずけば、一瞬で全てが崩れ落ちる、綱渡りのような生活だった。

堕ちた友人

私と同じく看護師を辞めた友人がいる。
看護学校の同期だ。
年齢がちょっと上で35歳。
何年も会ってなかったが、久しぶりに会うことになった。

(かなり派手になった友人・・)

彼女は、看護師を辞めて事務派遣になった。
でも今は夜の仕事をしている。
最初は水商売だったけど、今は内容がキツめの風俗らしい。
30歳を超えると水商売ができなくなり、食べていくために風俗をやっているそうだ。
その風俗もいつまでできるか分からない。
女の価値は時間と共に無くなる。
看護師に戻りたいけど、経験が1年も無く辞めてから時間が経ちすぎていて再就職できないと言われたそうだ。

「人生詰んだよね・・・」

彼女のその言葉が頭から離れない。

私も同じ道をたどるのか・・・?

私は彼女への同情よりも、自分の過去を後悔し、将来への不安と虚しさと絶望で、理性を保つのでやっとだった。

復職は簡単じゃない

私は看護師として復職した。

でも風当たりはかなり強かった。
ハローワークから10件以上の病院に履歴書を送り続けるも、まさかの内定0。
面接すら拒否された。
人材紹介会社にも登録し、履歴書を送り続け、ようやく面接を受けれたのがたったの2つ。
そのうちの一つの面接は、看護師を辞めた時のことを散々ダメ出しされ本当に惨めだった。

いま働いている介護施設は、人材紹介会社が頑張ってくれ、奇跡的に内定をもらえた。

人材紹介会社の担当者さんは、
「120%の力を出し切りました(笑)」
と笑っていたが、あれこれ手を尽くしてくれ本当に大変だったと思う。


(お世話になった担当者のYさん。ありがとう)

看護師の転職は、人手不足もあり簡単だと言われているが、33歳で6年もブランクがある人間だとさすがに難しい。
看護師だろうが、ブランクが長く、たいしたスキルもなく、30歳を超えた女をなかなか雇ってはくれなかった。

看護に復職してどうか?

介護施設の看護は、ぬるま湯みたいな感じだ。

(とある新聞広告の求人誌に載った私・・)

給料がそこそこ貰え、
仕事をそこそこ楽しめ、
将来の安定もある。

私にはちょうどいい環境。

だから転職して、今までの悩みは笑っちゃうくらいサッパリ無くなった。

給料は手取り25万。
病棟より低いかもしれない。
でも同じ施設で働くヘルパーさんの月収20万に比べたら全然良いし、携帯ショップの月収12万に比べれば2倍もある。
25万円もあれば、固定費を払っても毎月10万円近く自由に使える。
病棟時代のように貯金もできるようになった。

仕事内容は、バイタルや服薬管理と言った簡単な看護が中心。
あとは介護を手伝ったり、看護指導したり、カンファレンスに出席したり、何かと忙しい。
専門職としてのチョットした忙しさが心地良い。
わたしの本心は「誰かに頼られる心地よさ」を求めていたのかもしれない。

介護施設はこれからも増え続け、看護師はもっと必要になる。
看護師の資格がある限り、仕事が無くなることはない。
40代や50代になったら、どうやって食べていこうかと悩むこともなくなった。

看護師を捨てる覚悟とは?


看護師から転職したいなら、よく考えてほしい。

正社員として働けるか?
月20万円を超える仕事が見つかるか?
60歳まで仕事を続けられるか?
仕事を楽しめるか?

女が資格を捨てて生きていくのは難しい。

看護師の資格は強力な武器になる。
それを捨てるのはバカのすることだ。

有利になる場所があるなら、そこで戦えばいい。
看護師の資格を持っているなら、それが価値を生む場所で働くべきだ。

看護師はどこでも人手不足だから、介護や美容の世界で、ものすごく重宝がられる。

あの時の私はバカだった。

「看護師」の価値を知らず、安易に捨ててしまった。

看護師を辞めるなら、それなりの覚悟が必要だった。
少しでも迷いがあるなら、辞めてはいけない。

現実的にかなりの高確率で貧困になるから・・。

看護師から転職するなら

看護師の資格を活かせる転職をすべし。
仕事は病棟以外にも沢山ある。
shisetsu

介護施設や美容クリニックがオススメ。
給料そこそこ、仕事もそこそこ、やりがいもそこそこ。
ゆるく、ながく続けるにはもってこいの職場。

ただし勤務先はシッカリ選ぶこと。
介護施設や美容クリニックでも当たり外れはある。

そのためには情報を集めなきゃいけない。

実際の給料は?
昇給、手当、残業代、ボーナス額。

どんな職場?
どんな仕事を、どんな人たちへ、どんな人たちと。

やりがいは?
離職率、看護師への扱い、評価方法。

これだけで転職失敗の可能性はほぼ無くなる。
失敗したくないなら、転職サイトに登録して、
アドバイザーからドンドン情報を聞き出せばいい。

転職は情報が命。
恥ずかしと思ったら終わり。
人生がかかってる。
後悔したくないならガッツリ聞く。
図々しいオバサンを演じてるんだ、と思えばいい。

※2022年8月追記
オススメ転職サイト一覧

この記事が意外にも反響があり、
「利用した転職サイトを教えてほしい」とメールをいただいたので追記。
(※2022年8月 最新データに更新)

■看護roo!

院外転職のド定番サイト
  • クリニック、美容外科、介護施設の求人が豊富だった
  • 病棟も多くて、かなり好待遇だった
  • 年収500万越え、休日130日以上、固定休み、残業なしのワガママ求人とか
  • 年間19万人越えの看護師が利用
  • その内、96.2%が使って満足
  • 病院のリアルな生データが大量だった
  • 気になる病院の内情が一発でわかった
  • 半年先、1年先の転職にも気長に付き合ってくれる

看護roo!は、
私がお世話になった人材紹介会社。
看護師が仕事を探すなら一番オススメ。

【※注意】
ただし「北海道、関東、関西、東海、九州」エリア限定という欠点がある。
そのため東北、北陸、四国、九州の看護師は利用できない。

でも地域を限定している分、病院の内情には詳しく圧倒的な病院データを持っており、
「昇給はどのくらい?」
「どんな手当が付くの?」
「残業はどのくらい?」
「残業代は出してくれる?」
「ボーナスはどのくらい貰える?」
「仕事内容はどんな感じ?」
「どんな人たちが働いている?」
「離職率はどのくらい?」
「仕事の評価方法は?」

といった病院のリアルが分かったから、転職に成功できたんだと思う。

また看護roo!は、地域を限定している分、エリア内の求人もかなり多かった。
病棟も多かったけど、クリニック、美容外科、介護施設も結構あった。

看護師が北海道、関東、関西、東海、九州で転職先を探するなら、間違いなく看護roo!がオススメ。
登録して損はないと思う。
(完全無料だったし)

■レバウェル看護

全国OKの大手転職サイト
  • 看護roo!が使えない地域の人にオススメ
  • 月収30万以上が多かった
  • 残業なし、夜勤なし、遅番なしの求人も多かった
  • 企業内、訪問看護、介護施設、クリニックなど病棟以外も多かった
  • 非公開求人がかなり良かった
  • 有名なサイトだから安心できた

私は看護roo!から転職したけど、レバウェル看護もなかなか良かった。
求人も多いし、担当者さんも親切だし、大手だから安心できるし。

看護roo!と同時登録して、併用するのがオススメ。
求人や病院の内情など、もらえる情報量がかなり広がる。

■看護師ワーカー

病院以外の求人アリ
  • 希少な求人あり
  • クリニック、訪問看護、介護施設などなど
  • ただ求人数はチョット少なめか

看護師ワーカーも担当者さんが親身になってくれた。
クリニック、訪問看護、介護施設の求人もそこそこあった。
ただ全体的に求人が少ない印象。

クリニック、訪問看護、介護施設の求人を探す看護師にオススメの転職サイト。


看護師が転職で失敗する9つの特徴

1.転職の目的がハッキリしない

目的のない転職は失敗します。
転職活動を行う前に「何を求めて転職するのか?」をハッキリさせましょう。

その時に重要なのが優先順位です。
希望をすべて満たしてくれる病院は存在しませんからね。
妥協できる点、妥協できない点も明確にしましょう。

しかし転職活動中は、その目的がブレやすくなります。
多くの求人情報に触れると、アレもコレも良く見えてしまいますので。
そうなったときのためにも、シッカリと目的を決め、優先順位もメモしておきましょう。

これが転職で失敗しないためのコツです。

2.転職先の情報を集めない


転職は情報がすべてです。
給料や福利厚生、休日数、夜勤有無、勤務時間、配属される診療科など、表面的な情報だけではいけまんせん。
職場の雰囲気、離職率、イジメ有無、病院長、看護師長、教育体制など、勤務する看護師しか知りえない情報がもっとも重要です。
でも通常これらの情報は実際に働いてみないと分かりません。
しかし最近流行りの転職エージェントのサポートを受けると、病院の内情を教えてもらえるのです。
彼らは、病院の生情報を過去に転職支援した看護師から取得しているため、転職活動には不可欠な存在になっています。

転職で失敗したくない場合は、必ず転職エージェントから病院の情報を聞き出しましょう。
転職エージェントを上手に活用した例はこちらを参考にしてみてください。
大損してた!看護師が知っておきたい残業代のこと

3.転職エージェントに騙されている

たしかに転職エージェントは、便利なサービスです。
転職がかなり有利になりますから。

しかしです!
それは「優良」な転職エージェントであった場合です。
彼らも商売ですから、あくどい手法を使ってきたります。
blcak
参考:悪質な転職サイトに騙されたときの話

騙されるパターンを知っておき、シッカリ対策をしておきましょう。

4.人気が無い年齢

転職で有利な年齢は限られています。

看護師の転職市場でもっとも人気がある年齢は26歳~35歳です。
キャリア的に即戦力かつ、現場も管理もできるハイブリッド看護師の可能性がもっとも高いため人気があります。
ただ35歳を超えると、扱いずらさが問題になってくるため、人気が徐々に下降していくでしょう。
次に人気なのが20代前半です。
現場でバリバリ夜勤もこなす看護師の可能性が高いですから。

逆に結婚して子供がいたり転職回数が多い看護師は人気がありません。

5.面接対策をしていない


転職には必ず面接があるため、事前準備が必須です。
ただ看護師は転職市場でとても人気がるため、「面接は受かって当然」という人が少なくありません。
たしかに看護師は他業種に比べると楽に受かりますが、待遇の良い病院になると話は変わります。
例えば月給30万越えを保証している病院は、多くの看護師が募集してきます。
そのため面接で失敗してしまえば採用されません。

それなりの病院なら面接対策なしで転職できるかもしれませんが、条件の良い病院は必ず面接対策をしましょう。

6.パートナーがいない

転職活動のパートナーは重要です。
でも転職で失敗しているケースのほどんどは、自分一人で活動をしています。
友だちや先輩に相談することはあっても、病院の愚痴だったり、上司の悪口だったり、噂話を聞いたり、あまり転職活動のためになるとは言えません。

看護師は何でも一人でこなしてしまう人が多いです。
転職だけではなく、仕事でも、プライベートでも、恋愛でも、誰かに頼ることなく自分の力で進んでいきます。
それはそれでとても良いことですが、一人で考えることには限界があります。どうしても思想が偏ったり、偏見を持ってしまったり、視野が狭くなるからです。
そんなときに頼れる先輩や転職サイトのアドバイザーなど、客観的な視点であなたの転職活動を見てくれる人がいれば、転職の成功率は大きく向上するでしょう。

7.大手医療グループばかり狙っている

大手の医療グループは給料が良く、福利厚生が公務員並みに厚く、教育隊も良いです。
看護師に人気の有名どころでは、日本赤十字社、済生会、徳洲会、明理会、鉄蕉会などでしょうか。
ただしこういった大手は求められる看護スキルが高すぎたり、医療事故防止策が過剰すぎてトリプルチェックにまでなっていて非効率的だったり、上下関係がとてもハードな体育会系気質だったり。
また場所によっては点滴、採血、検査、説明、処置をすべて医師が行う「どこの大学病院だよ!」と突っ込みたくなるような病棟もあります。
ふつうの病院から転職すると「本当にここは病院なのか?」と思うくらい異文化なケースも多々あります。
ご注意ください。

8.看護師求人の正しい見方を知らない

求人は裏を読み解くのが重要です。
病院側の都合がいいように書かれているからです。

まず求人で一番トラブルになるのが給料額です。
例えば「月収20万~45万(経験を考慮)」といった求人があったとします。「私は看護師10年目だから30万円はいけるだろう」と思っていても、入職してビックリの20万円スタートだったなんて話も結構あります。
これは「経験を考慮=院内での経験を考慮」といった意味でつかっている求人もあるからです。
そのためベテラン看護師であっても新卒と同じ給料からのスタートになってしまうのです。

転職するなら、こういった法律スレスレのグレーな求人を見抜く力が必要になります。
転職本を何冊か読んでシッカリ勉強しましょう。
または、求人票を読み解くプロである転職エージェントに相談するのもありです。

9.転職すべきかどうか迷っている

「自分は転職すべきか?」
それとも
「今はガマンすべきか?」

迷いながらの転職は、かなりの確率で失敗します。
まずは「自分の将来」を予想するための調査をしましょう。

転職に失敗は、「転職してトクをするのか?」「損をするのか?」をキッチリ調べることで、かなり減らせます。

詳しくはこちらに(参考記事)→転職で失敗しないための準備マニュアル