看護師が治験コーディネーターに転職するための全知識

皆さん、治験という言葉ご存知ですか?

治験は、新薬の有効性や安全性を確かめるため、実際の患者さんに対して行う試験です。世界中の人たちが安全に薬を利用するためにはとても大切なことです。

その中で要となる人が、治験コーディネーターです。治験コーディネーターは看護師の就職先として人気急上昇中の仕事です。別名CRCと呼ばれています。

未知の薬を世に送り出す仕事に携わるって素敵ですね。病院以外の職場に興味のある方に、特におススメしたい仕事です。

項目 評価 コメント
看護師資格 不要 患者さんや医師と関わるため資格があった方が有利。
※企業によっては看護師資格が必要な場合もある。
その他資格 不要 特になし
臨床経験 不要 原則医療行為はないため未経験でも可能。
平均給料 21万~40万 企業によってばらつきあり。
福利厚生 大企業が多いため休日が多い。リフレッシュ休暇、夏季休暇、育児介護休暇取得率が高い。
教育制度 治験は特殊な仕事であるため未経験からの研修が充実しています。フォローアップ研修もあります。
シフト体制 1交代制 9:00~18:00 企業の会社員であるため企業の勤務時間帯と同じ。
夜勤 × 日勤のみ。
残業 × ほとんどない。
土日出勤 × 基本月~金 土日完全週休2日制が多い。
求人数 求人数はあまりない。
正社員 正社員の募集が多い。
医療行為 原則医療行為は不可。
仕事の難易度 治験に関わる製薬会社、医師、患者、家族、監査機関など複数のやり取りが発生するためコミュニケーション能力と管理能力が必要とされる。資料作成の補助もあるため事務の知識も必要。
スキルアップ × 医療行為はほとんどないため看護スキルは身に付かない。
将来性 新薬開発をする製薬会社は外資系も含め増加している、特にがん分野の開発が進んでいる。求人数も増える見込み。
病院への復職 医療行為がほとんど無いため、時間が経つにつれ難しくなる。
子育てママ 日勤のみで土日も休みである。福利厚生も充実しているため働きやすい。
新卒 新人採用あり。教育研修制度も充実している。

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治験コーディネーター(CRC)の仕事内容は?

ズバリ!「治験プロジェクトの進行をスムーズにする調整役」です。

看護師としての仕事は少なく、その代わり連絡や報告といった事務的な作業が多くなります。看護師の仕事とは別物だと思っておいて間違いありません。

なので患者に対して医療行為はほぼありません。

「医療行為がないなら看護師がなっても意味ないじゃん!」と思いました?でもそれは違います。

治験に関わる人は医療関係者や製薬関係者がほとんどです。院内のややこしい人間関係や、医師の扱い方に慣れてる看護師にはとっても有利な職場なのです。

CRCが働く場所は2種類あります

1.SMOと呼ばれる新薬の治験を専門とする治験屋さん(つまり会社)

SMOで働くCRCは一般企業の会社員と同じです。

治験のプロジェクトが始まると、朝、治験を行う病院等の医療機関(病院)に出向いていきます。病院では、医師や患者さんとの連絡や調整を行います。終わると会社に戻って報告や入力作業等を行います。

2.医療機関(病院など)

普段はみなさんと同じ看護師として働いています。

ただし、勤めている病院が治験対象になったとき、看護師ではなくCRCに変身します。治験が終わるまでは、臨時のCRCとして働きます。

期間中は医療行為はせず治験に専念します。治験が終わると、看護師に戻り看護師として働きます。


8割のCRCは1のSMOに所属しています。

ここではSMO勤務のCRCについてお話していきたいと思います。

仕事内容は、主に治験に関わる人たちの調整役にあたります

治験に関わるのは、試薬を開発した製薬会社、試薬を臨床する医療機関の医師やスタッフ、そして患者さんです。

1.製薬会社のサポート

製薬会社に対しては、治験スケジュールの調整や連絡も仕事に含まれます。

2.医師のサポート

医師は普段の診察と治験と両方を抱え非常に忙しくなります。CRCはその医師のサポート役を務めます。

具体的には、治験関係書類の転記や、治験データの入力作業を行います。

3.患者さんのサポート

治験を受けるのに最適な患者さんを探すことから始まります。

患者さんが集まると今度は、治験内容の説明であるインフォームド・コンセントにも立ち合います。その他、治験の進捗を管理し、副作用がないかのチェックも行います。

治験コーディネーター(CRC)ってどんな人達?

治験は全国で行われているため出張を伴うケースがあります。そのため、独身の女性の比率が高い職場です。

中でも20代~30代の元看護師、保健師、薬剤師が多いです。その他、企業の一般社員といった他業種の就業経験者もいます。

看護師が多い理由として・・・

  • 患者さんや家族、医師の扱いや関わり方がわかっている
  • 病院のしくみや疾患に関する知識もあり、カルテを読むのが早い

この2つが挙げられます。

同じような理由から、看護師に次いで薬の知識が豊富な薬剤師も多くなります。

その他、CRCは様々な立場の人の間に立つため、企業の元営業やアパレルショップの店員といったコミュニケーションスキルの高い人も働いています。

治験コーディネーター(CRC)として働くメリット

時間

企業の会社員のため看護師のように夜勤はありません。また、土日休みがほとんどです。計画書に従って業務を行うため、残業も発生しにくいです。

CRC自体が調整役のため、自分のスケジュールも調整できたりします。

福利厚生

SMOは合併を繰り返し規模が大きくなりつつあります。いわゆる大企業であるため、福利厚生が充実しています。

会社員であるため、治験プロジェクトがない年末年始などは長期休暇が取りやすいです。

仕事内容

SMOに勤める看護師は原則看護業務は行いません。治験結果の公平性を保つために禁じられているからです。

治験は治験実施計画書に基づいて業務を行います。業務の内容が明確で形式通りに遂行されることが重要です。そのため、形式外のイレギュラーな仕事が発生しにくいです。

人間関係

治験プロジェクト先に派遣されると、色々な職種の人とほどよく関わります。良い意味で人間関係がドライです。

病院のように同じ職場の他の看護師との関わりがありません。そのため、ドロドロとした人間関係で悩む機会がないと言えます。

その他

ジェネリックの利用が増えたことで、先発の医薬品の市場が縮小しています。

そのため、もっと多くの新薬の開発が望まれています。CRCの数も追いつかず、不足しているというのが現状です。

  • コミュニケーション能力が高い!
  • 治験のための法律であるGCPの知識がある!

このようなやり手のCRCは他のSMOから引き抜きがあったりします。年収UPにもつながるため上を目指すにはもってこいの職場と言えます。

治験コーディネーター(CRC)として働くデメリット

お金

会社員のため、看護師と比べて給料は低くなります。

看護師の年収平均は400万~500万です。CRCは、年収300万~400万と100万ベースで低くなります。

仕事内容

CRCの仕事は看護師とは全く異なります。看護業務はほとんどないため、看護することに「やりがい」を感じる人にはおススメできません。

逆に、看護師はあまり行わない事務的な作業が多くなります。

治験のデータ転記や報告書の作成といった作業は全てPCを使った事務作業になります。

一般企業のOLが書類のミスをしても命に関わることはほとんどありません。治験の場合、数値や桁を間違えると患者の命に関わる重大なミスにつながります。

ミスを防ぐために細かなルールもあります。PCの苦手な方には想像以上にハードな仕事だと言えます。

治験に関わるため薬の知識は必須です。効果や副作用といった情報はもちろん、治験のための法律であるGCPを理解しておく必要があります。

また、治験が行われる医療施設はいつも同じではなく、場所も通勤圏内ばかりではありません。そのためCRCは治験期間中の長期出張もあります。毎回異なる環境に入ることがストレスと感じるタイプには向かない仕事です。

人間関係

スケジュール通りに進めるためにはCRCが調整役となります。受け持ちの患者の診察を優先したい多忙な医師、治験を早く進めたい製薬会社、新薬を試したい患者さんの間に立ちます。

当然、スケジュールの折り合いがつかないこともあります。そんなときにCRCが板挟みになりストレスを感じます。

また、看護師をとりまく人間関係は病院内に収まっていました。それは、常に自分がホームにいるということです。

でもCRCは、自分が勤める会社以外に、医療機関や製薬会社との関わりもあります。会社から飛び出し、アウェイ(病院や製薬会社)での活動も十分にあります。

そのためビジネスマナーが必要とされます。服装や言葉遣い一つで不快な印象を与えないよう気を使いながら接します。

まとめ

治験コーディネーターは看護師とは違い治験が滞りなく行われるのをサポートする仕事です。どちらかというと一般企業の医薬品部門のOLと言えます。医療行為がない代わりに、製薬会社や医師、患者さんや家族の間に立ち、調整を行う仕事を行います。

必要なスキルとして、コミュニケーションスキルや事務作業時のPCスキル、プロジェクトの進捗管理するスキルが必要とされます。

治験が行われる医療機関内で雇われるケースもありますが、治験を専門とする企業に勤めることがほとんどであり、治験ごとに医療機関への出張が発生する場合もあります。

さらに治験コーディネータのことを知りたい方は、
この記事「看護師から治験コーディネーターに転職したけど質問ある?」に詳しく書かれているのでご覧ください。

治験コーディネータに関するコラム集

ノルマ

一般的に、ノルマ方式は避けてきました。なぜなら、「ノルマ」「出来高制」にしてしまうと、治験の質が下がってしまうからです。極端な話、データの改ざんにまで及んでしまいます。

しかし一部の小規模なSMOでは、ノルマ方式が蔓延しています。背景には、製薬会社の合併が激しく、それに伴い、SMO業界も合併や倒産の動きが激しくなっていることが挙げられます。

特にSMO業界では、合併を繰り返し総合的な治験業を営む大規模なSMOと、地域や特定の疾病に特化した小規模なSMOとの二極化が進んでいます。その中で小規模なSMOでは営業基盤が確定しないまま利益追求を優先しているケースがあります。いわゆる「ノルマ」方式を採用しているケースです。

SMOはどこから報酬をもらっていると思いますか?

医療機関ではありません。製薬会社からです。製薬会社もSMOも不安定な波の中にいるため、両社間の治験契約自体が「固定費0円で全て出来高制」がほとんどです。

CRCは、契約期日までになにがなんでも症例数を集めるように製薬会社とSMOからの圧力を受けます。その上、最近では一症例の単価も下がり、小規模SMOとしてはノルマ方式にしなければ利益を得られない状況にあります。CRCはもはや営業職と言えそうです。

「患者さんのために」と看護師をしていた人にとってはギャップがあります。「ノルマあり/なし」など報酬のしくみを確認してSMOを選ぶ必要があります。

被験者はCRCが集めるの?

CRCの重要な仕事の一つに「被験者を集める」ということが挙げられます。適当に沢山集めればいい!ということはありません。

国の定めたGCPという法律によると、被験者の人権保護に関するルールがあります。ルールにのっとり慎重かつスピーディに集めることが求められます。

集める方法としては主に3つあります。

  1. 治験対象の病院の医師からの紹介
  2. CRCが院内にポスターを掲示したり、HPに広告を出して被験者を直接集める
  3. 治験対象病院や関連病院のカルテを元に抽出する

どの手段においても、カルテを精査し、被験者を見極めるにはある程度の医療知識が必要です。

「ノルマ」があるのでは?とよく言われています。実際は被験者確保人数を「ノルマ」にしてしまうと、ルールを犯してしまう可能性があるため「ノルマ」はありません。ただ、製薬会社からすると治験がスピーディに行われるとうれしいため、早く被験者を集められた場合CRCの評価はあがります。

どうしてSMOのCRCは医療行為ができない?

SMO所属のCRCは医師の指示のもとに医学的判断の不要な治験業務のみを行います。GCPのルール上、SMO所属のCRCは看護資格を持っていても患者さんに医療行為をしてはいけません。治験データの正確性と公平性を保つためとされています。

対して、院内に所属するCRCは、看護師と兼任がほとんどであるため、普段は医療行為を行います。

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