看護師が訪問看護ステーションに転職するための全知識


五十嵐さん(40代・女性)
大学病院からキャリアスタートし、正社員や派遣などで18の職場を経験。今は転職アドバイザーとしても活躍。

看護師の皆さん、こんにちは。

最近、訪問看護ステーションで働く看護師が増えてきました。
理由は人それぞれですが、訪問看護には「病棟にはないメリット」があります。

  • お年寄りと関わるのが好き
  • 患者さんとしっかり向き合いたい
  • 一人で働くのが好き
  • 時間の都合が付きやすい

ただし、デメリットが多いのも事実です。

  • 一人での看護が不安
  • プレッシャーがかかる
  • 本人やご家族とコミュニケーションが重要

訪問看護は辞めていく人が多いのもまた事実です。

では「訪問看護への転職で失敗しない」ためには、どうしたらよいのでしょうか?
そこで今回は、訪問看護の転職事情をまとめてみました。

訪問看護の転職事情

項目 評価 コメント
看護師資格 必要 医療行為があるため看護師の資格は必須
その他資格 必要 自動車免許が必要。都市部では自転車移動なことも。
臨床経験 必要 基本的に3年以上の経験が望ましい。
平均給料 20万~30万 病院に比べると夜勤がない。年収で100万円ほど減る。
福利厚生 小規模ステーションなら×。病院母体なら◯
教育制度 基本的に即戦力を求められる。ただしブランクアリの看護師も多いため研修もある(ステーションによる)
シフト体制 1交代制 9:00~18:00 日勤メイン。
夜勤 なし 基本的に夜勤は無い。
残業 基本なし。正社員が少ないと請求業務で残業あり。
土日出勤 なし 土日休みのところが多い。担当利用者さんによる。
オンコール あり オンコール対応必須。
求人数 多い 求人数は全国的に多い。今後も増える見込み。
医療行為 あり バイタルサイン測定、適便、清拭 医師の指示による注射、点滴、血糖値測定、人工呼吸器などの医療機器操作など。
将来性 訪問看護は今後も増え続ける(2025年団塊世代が後期高齢者となる)。独立してステーショ開業の道も。
病院への復職 看護が多くスキル維持が可能。幅広い知識を習得できるため復帰しやすい。
子育てママ 時短やフレックス制もある。パートなら休日や勤務時間を選びやすい。夜勤なし。定時帰宅しやすい。
新卒 × 新卒採用はほぼない。ただし最近では病院母体のステーションが新卒採用していることも。
夜勤がないため子育てナースが多い

訪問看護の仕事

訪問看護の仕事は5つに分類されます。

  • 看護計画
  • 看護記録
  • カンファレンス
  • 請求業務
  • 看護

看護計画と看護記録は、病棟とほぼ同じです。
カンファレンスはケアマネージャーや介護士、医師を含めて行われます。

請求業務は、病棟にはない仕事です。
訪問した日時と内容をパソコンに入力していきます。
役所の監査が入ったときは、これが重点的にチェックされるため、間違えないように何度も確認しなければいけません。
パートさんたちの分も入力するため、正社員が少ないステーションでは残業の時間も長くなります。

さて次は、肝心の看護内容を見ていきましょう。

看護

訪問は、1件につき60分が基本です。
看護内容は、患者さんの容態によって様々ですが、注射や点滴、バイタル、気切部管理、酸素管理、褥瘡ケア、カテーテル、ストマ、リハビリなどです。
その他、床ずれの処置、食事、洗髪、入浴、清拭、適便や排泄の補助や介助、栄養指導や認知症予防の指導も入ってきます。病院と違い、訪問するときは医療器具や衛生材料を持参します。
在宅では末期の方も多いため、緩和処置などのターミナルケアも担当するでしょう。

患者さんによって、人工呼吸器の装着や、ストーマ、インシュリンの注射や血糖値の測定、胃瘻の管理や吸引、認知症介護、嚥下機能訓練、リハビリ介助も行います。症例は患者さんごとに異なるため、症例に関する知識と判断力が必要とされます。

また医療の提供だけでなく、会話を含めたコミュニケーションを十分にとり、不安な点や悩みに気づき、生活そのものに寄り添うことも大切な仕事です。
訪問看護師の仕事は「救命」や「治療」だけではなく、「生きることすべてに対する支援」も求められているのです。

患者さんは8割が高齢者です。
症例としては、大きく4つに分けられます。

  • 寝たきりの高齢者
  • 認知症(若年性を含む)
  • 末期がん
  • その他難治性疾患

最近では脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病の悪化など、病気や後遺症、障害をかかた方が増えています。
また終末期の患者さんを中心に「看取り対応」も必要です。

「これを1人でやる自信がない…」

たしかに未経験の方は、不安だと思います。

しかし経験者から言わせていただければ「慣れ」です。
訪問看護は、患者さんの入れ替わりが少ないため、慣れてしまえばルーティンワークです。
病棟経験があれば慣れも早いです。

またLINEのテレビ電話も不安を少なくしてくれます。
分らないことは、テレビ電話でステーションのベテラン看護師が指示を出してくれます。
頼れる人がいると、精神的にはかなり楽になります。

近頃では新人看護師にプリセプターを付けるステーションもあるそうです。
自信がない方は、そういった手厚いサポート・教育をしてくれるステーションを選びましょう。

訪問看護の看護師

訪問看護の看護師は、30代~50代が中心です。
年齢層は高めな理由は3つあると言われています。

  • 経験が必要
  • 経営的な理由
  • 人生経験が必要

まず1人看護は、ある程度の臨床経験が必要になります。
おおむね「看護師経験が3年以上」と言わています。

また小規模なステーションが多く「看護師を育てている余裕がない」という経営的な理由もあります。
さらには患者さんのプライベートに深く踏み込むため、人生経験のある看護師が優遇される傾向もあります。

このような事情から、訪問看護スタッフは30代~50代が中心となっているのです。

勤務時間

基本9時~18時です。
土日は基本休みですが、担当する利用者さんによっては出勤します。
夜勤はありません。
ただしオンコールがあります(詳しくは後記をご覧ください)

また基本的に直行直帰できるため、利用者さんによっては朝遅めに出勤したり、早めに帰宅できたりもします。

移動は基本的にステーションの車を使います。
ただし小規模ステーションは資金に余裕がなく、自分の車を使うこともあります。
その場合、ガソリン代は出ますが、タイヤ代や整備費だったり、事故が起こった時の保険は自腹です。

訪問看護のメリット

訪問看護のメリットは多くあります。

  • 患者さんにジックリ向き合える
  • 患者さんの生活を支えている実感が持てる
  • 時間の都合が付きやすい

確かにこれらも訪問看護の魅力の一つです。
でも実際に働いてみるとチョット違います。

訪問看護の最大のメリットは「気楽さ」と答える人が結構います。
訪問看護は、閉ざされた病院とは違い、開放的ですからね。

「外に出れる」のがとても良いです。
病院だといつも誰かが近くにいて息が詰まりますが、訪問看護は、車で一人っきりになれるからリフレッシュできてしまいます。
コンビニでコーヒー買ったり、お菓子買ったり、お弁当を買ったり。
移動の合間に色々できるのが本当に良い気分転換になります。
(眠い時は10分早めに出て仮眠したりも。みんなやってます。笑)

また患者さんと1対1で看護できるのも良いです。
うるさい先輩もいないし、監視する師長もいないし、命令する医師もいません。
「訪問看護は患者さんにジックリ看護できる」というのは、「自分の裁量で自由に看護できる」という意味でもあります。

もちろんステーションの方針には従う必要はりますが、小規模なステーションではルールも少なく、自由度が高いものです。
訪問看護で働くと「今まで色んなものに縛られていたんだな…」とよくわかるでしょう。
人間関係、上下関係、規則規定などなど。

訪問看護の1番の良さは、その開放感です。

訪問看護のデメリット

  • 急に休みにくい
  • オンコールがある
  • 一人のプレッシャーがある
  • 教育体制が悪い

訪問看護は人数ギリギリのステーションが多いため、急な休みが取りずらいです。
どうしても休みたい時は、自分でパートさんを確保したり、利用者さんに時間変更をしてもらったりと結構大変です。

オンコール当番は、生活にそれなりの支障が出ます。
小規模ステーションであれば、週1回~3回と、そこそこの頻度で回ってきます。
また待機中は、遠出できない、酒が飲めない、食事を作っていても出勤がある、お風呂中にも電話がある、寝ようとしたら電話がある、寝てたら電話がある、化粧落としたりお風呂に入るタイミングに気を使う、など結構大変です。
オンコール手当は当番1日1000円、電話が1回あればプラス200円、出勤したら1回プラス1500円という感じです。
金額的には割に合わないですが、訪問看護には必須の業務です。

一人のプレッシャーは先ほども書きましたが、どうしても付いて回ります。
慣れの部分もありますが「もしもの時は自分次第」という覚悟が必要です。

教育体制に期待はしない方がいいです。
もちろんステーションにもよりますが、小規模ステーションの場合教育にまで手が回らないことがほとんどです。
即戦力が求められ、勉強に関しても「自分でやってね」というスタンスです。
利用者さんへの経験者同行も最初の1回だけだったり、場合によっては「人が足りない…。何とかしてきて」と、いきなり一人だったり。

訪問看護の求人事情

訪問看護の求は多いです。
ステーションの数が増え続けていますし、看護師の数も足りていません。
ハローワーク、求人誌、転職サイト、新聞の折り込みなどで探せば沢山見つかります。

ただ注意点がいくつかあります。
まず給料は病院より下がるでしょう。
訪問看護は、医療費が病棟ほど優遇されておらず、どこも経営が厳しいです。

さらに毎年多くのステーションが潰れています。
看護師の確保も大変ですが、患者さんの確保も大変なのです。

患者さんは病院から紹介してもらうのですが、コネや営業力が無ければ、患者さんが全く集まらないこともあります。

そんな訪問看護の中でも給料が良く、安定しているのは、やはり母体が病院のステーションです。
病院母体なら、訪問でも病棟でも基本給は一律です。個人経営のステーションに比べてれば、そこそこの金額がもらえるでしょう。
患者さんの確保も母体病院からの紹介があるため、潰れる心配も少ないです。

また都市部では、疾患に特化したステーションもあります。
「末期がんのターミナルケア専門」「透析専門」「精神障害者専門」などです。
得意な疾患から、ステーションを選ぶという方法もあります。

訪問看護まとめ

訪問看護は、病院以外の職場大本命です。
1人で気楽に働け、看護師としてのやりがいもあり、夜勤も無く、給料もそこそこです。さらに看護スキルを維持しやすく、もしもの時は「また病院で働く」という選択もしやすい環境でもあります。

「病院以外で働きたい!」という方には、訪問看護がオススメです。

ただし訪問看護は、ステーションごとの待遇格差が大きいです。
仕事内容、看護方針、患者さんとの距離感、オンコール、給料額、経営状況など、シッカリと情報を集め、自分に合ったステーションを探しましょう。

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