看護師が小児専門病院に転職するための全知識

小児専門病院(こども病院)で働きたいと考えている看護師の皆さん、こんにちは。

小児専門病院の仕事には、
難病の子どもたちを看護するやりがいがありますよね!
さらに、専門性が高く看護の技術を深めることができます。

認定看護師や、専門看護師の保有者も多く、全体的にレベルの高い職場です。
とにかく「できる看護師」が多く在籍しているのが小児専門病院の特徴です。

その反面、小児専門病院の辛さについていけず退職していく看護師もいます。
要求される高いレベルの看護についていけなかったり、患児のことを思いすぎて精神を病んでしまったり、ただでさえ忙しいのに勉強会やセミナーが強制参加だったり……。

そんな辛さに負けず、「できる看護師」になって子どもたちの看護をしたいですよね?

そのためには、具体的な仕事内容を見ながら、小児専門病院とは・必要な能力は何か、ということを知ることが重要です。

小児専門病院で「できる看護師」を目指して頑張りましょう!

小児専門病院とは?

小児専門病院は、全国に約30ヵ所ほどしかなく、国や県、または独立行政法人が運営しています。

看護師が働く場合は、そのほとんどが公立病院なため、公務員の身分となります。(一部の独立行政法人は、公務員ではなく、民間病院と同じ非公務員となります)

患児は、0~15歳までが対象で、未熟児の受け入れが多くなっています。

項目 評価 一言コメント
児の状態 特殊 特別なケアを要する患児が来院する。他の医療機関からの紹介や転院が多い。
給料 約19万~29万 公務員・非公務員とも、勤め先によって条例や独立行政法人の規定によって決まり、昇給もある。大都市と地方の差がある。
福利厚生 公務員・非公務員とも年金や共済があり、育児休暇も3年まで取れる。公務員は年金払い退職給付があり、非公務員は雇用保険に入る。
夜勤 あり
土日出勤 あり
求人数 新卒・既卒ともにほとんどの病院で毎年募集がある。ただし、一般病院と比べて病院数が少ないため、選択肢は限定される。
正社員 ほぼ正職員の募集。
パート・アルバイト × パートや嘱託職員の求人はほとんど出てこない。稀に代替職員を緊急で募集することがある。
求人情報 一番情報が豊富なのは病院のホームページ。転職サイト、求人誌、ハローワークでも公開されるが、数は少ない。
仕事の難易度 高い 希少な症例が多い。常に勉強し続けることが必要。
スキルアップ 認定看護師や専門看護師を取得できる。オペ室に配属されれば、最先端の手術が見られる。
子育てママ × 夜勤が必須のため、子育てママには難しい。
新卒 年に数回採用試験がある。小児科の中では一番教育体制が整っている。
ブランク × 専門性が高いため、難しい。
小児未経験 小児科未経験の場合は難しい。ただし、急性期の産科で助産師と仕事の経験があると歓迎される。

専門性が高く大きく成長できる、レベルの高い職場です!nekonarse-shiji

小児専門病院の仕事内容は?

小児専門病院の仕事は、難病の子どもたちへの看護です。難病の子どもは、一般病院での治療が難しい患児です。

患児の年齢は0歳から15歳までです。最近では、未熟児の受け入れも多くなっています。また、出産前のハイリスク妊婦を受け入れることもあります。

病気は、完治が困難なケースが多く、一般的な小児科病棟と比べて、治療が長期化しやすい傾向があります。そのため、患児との付き合いが、10年以上になることも珍しくありません。

看護内容は、基本的に一般の小児科病棟と同じです。異なるのは、症例が少ない疾患ばかりのため、常に勉強し続けなければいけない点です。

また、患児の状態は、一般の小児科の患児以上にナーバスになっているため、対応には高い社交スキルが求められます。

    【主な例】
  • 小さな患児の場合は、治療への恐怖や不安からくる治療拒否への対応。
  • 10歳前後の場合は、長期化する治療への不安や、将来の非観などからくる、自暴自棄への対応。
  • 中学生の場合は、学校でのトラブル(病気が原因)や、長期に渡る入院のストレス(主にプライバシー問題)からくる、看護師に攻撃的になる心理への対応。

いずれの場合も患児の心情をケアするだけではなく、家族へのケアも重要になります。特に母親は、患児への影響力が強く、協力を得られるかどうかが治療の質に大きく関わってきます。

小児専門病院の看護師とはどんな人?

小児専門病院には、一般の小児科以上に意識の高い看護師が全国から集まってきます。

集まった看護師のレベルは、一般病院と比べて非常に高く、看護知識・理解力・判断力などが飛び抜けています。

また、「患児のための看護」を突き詰める看護師が多く、それを同僚に対しても求める傾向があります。例えば、新人教育は、小児科の中で一番厳しいといわれており、「私にできるから、あなたにもできるはず」と求められる水準が高くなりがちです。

スキルアップのための勉強会やセミナーは、毎週のように院内で開かれ、「暗黙の強制参加」が習慣になっています。休日も院外の勉強会やセミナーへ積極的に参加する看護師が多くいます。

その結果として、認定看護師や専門看護師の保有者は多いですが、「レベルが高すぎてとてもついて行けない」と、入職後1年以内に退職する人の割合が高いです。

それから、患児を思うあまりに精神を病んだり、気力や体力を使い果たして去っていく看護師もいます。意識が高すぎるがゆえに、「子どもが苦しんでいるのに自分だけ楽しめない」と、仕事とプライベートの切り替えができず、鬱になる看護師や、長年にわたり献身的に看護した患児がステったとき、燃え尽き症候群になり辞めていく看護師もいます。

このように小児専門病院は「できる看護師」の割合が高いため、入職した看護師のレベルも高くなります。その一方でついていけない看護師も多く、離職率は高い傾向にあります。

小児専門病院のメリットは?

小児専門病院には、レベルの高い看護師や医師が集まってきます。

レベルの高い集団の中で働くと、自分の看護スキルも自然と上がっていきます。小児専門病院で5年働けば、一般の小児科で働く看護師と比べて、かなりの看護知識・理解力・判断力が身に付くと言われています。

「認定・専門看護師」についても、院内の取得支援制度や勉強会やセミナーが充実しており、さらに院外セミナーの情報も豊富なため、小児科の中で最も取得しやすい環境です。高い看護スキルを持っていれば、疾患で苦しむ患児を助けることにもなり、さらにモチベーションが高められるでしょう。

また小児専門病院で得たキャリアは、一般の小児科に転職する時にも、大きく評価される傾向があります。小児専門病院の看護師は、一般の小児科から主任や師長候補として、ヘッドハントされるくらいです。

さらに小児専門病院で得たスキルは、小児科であればどこに行っても通用するため、結婚や出産後の復職でも大きな武器となります。再就職は、小児クリニック、小児外科、小児病棟、障碍児施設など広い範囲を選べるだけではなく、小児看護のスペシャリストとして重要視される傾向もあります。

小児専門病院のデメリットは?

小児専門病院では、レベルの高い看護が要求されるため、ついて行けなくなる看護師もいます。

レベルの高い集団の中では、少しできないことがあると、「こんなこともできないの?」と厳しい目を向けられます。「言われたことは一回で覚える」くらいの気迫が無いと、どんどん周りから遅れていきます。

また、多忙な中でも、「暗黙の強制参加」が慣習となっているため、勉強会やセミナーを欠席することはできません。

大変なのは、人間関係や勉強だけではありません。小児専門病院では、夜勤も大きな負担になります。小児専門病院に限らずの話ですが、小児科の夜勤は、成人病棟と比べて人員が多く必要になります。

夜泣きやおむつやミルクなどで手がかかるからです。新生児が多い病院だと、5人の患児に2時間おきにミルクをあげ続け、夜が明けることもあるくらいです。

母親の付き添いがあれば代行してもらえますが、必ずしもそうではないため、その多くが看護師の仕事になります。これらの仕事は「そのくらい」と思われがちですが、実際にはかなりの業務負担になります。

さらに小児専門病院は、重篤な患児への看護やチューブ、点滴のルート管理があるため、かなりの負担となります。このように小児専門病院の夜勤は、回数も業務内容もハードになる傾向があります。

小児専門病院では、母親とのコミュニケーションが難しく、それが苦痛で辞める看護師が多いと思われがちです。しかし、実際には、「患児のための看護」をめぐる看護観の押し付けや意見の食い違いなどの人間関係や夜勤の業務量に耐えきれずに辞めていく人が多いのが現状です。

まとめ

小児専門病院は、スキルアップしたい看護師におススメの病院です。先輩から教わる看護スキルや院内・院外で開催される勉強会やセミナーを通して、焦ることなくステップアップしていきましょう。

また、小児専門領域を極める看護師や認定看護師など、意識の高いスタッフと共に働けるので、モチベーションを保てる職場です。

しかし、一般の小児科病棟以上に「子どもの苦しみ・悲しみ・死」に直面する場所でもあり、「子どもが好き」という気持ちがいくら強くても、到底続けることができない過酷な現場でもあります。

さらに、先輩との相性も勤務していくうえで重要なポイントになりますので、応募する前に、実習や見学会に参加して、病院の現状を把握しておきましょう。小児専門病院の現状を知ったうえで、入職の意思が揺らがないなら、是非応募してください。

小児専門病院は、小児科の最高峰の技術が集結している場所です。ぜひ、小児専門病院で自分のチカラを試してみてください。

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モチベーションのヒミツ

ターミナルケアや看取り、治療のめどがつかない患児への看護など、辛い現実もありますが、最先端の技術も目の当たりにできます。また、病院によっては国外から患者を受け入れることや、看護師がウォークインの患者をトリアージすることもあります。

そして、一般の病棟と違い、医師と看護師だけでなく、理学療法士、ソーシャルワーカーなどとチームを組んで治療をします。さらに理解を深めるなら、渡米の必要がありますが、チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)の資格を取得すると良いです。

小児専門病院に転職するためのコツ&ポイント

  • 小児がんに興味がある方は、拠点病院へ入職すると良いでしょう。小児がんの拠点となる病院は全国で約15カ所です。すべての病院ではありませんから注意しましょう。
  • 応募時に配属希望は出せますが、欠員状況に左右されます。確実に狙うなら、配属確定型試験を受けましょう。
  • 病院によっては、外来のみの勤務が叶う場合もあるので、子育てママは問い合わせてみると良いでしょう。

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