今回のご相談
M.Kさん 27歳女性
看護師5年目
転職を決断できずに迷っています。
新卒で今の職場に入職して5年ほど経ちました。看護師として成長でき、人間関係もよく、待遇もそれなりによく(夜勤は大変だけど)、不満はほとんどありません。
しかし「このままでいいのだろうか?」という思いがあります。
仕事にも慣れ、毎日同じことの繰り返しの為、ここ数年は成長している実感がありません。
転職を考えるようになりましたが、今の職場の居心地の良さ、そして「退職は仲間たちへの裏切りなのでは?」という思いもあり、どうしても迷いが出てしまいます。
このまま勤め続けるか、または転職するか。
どうやって決断すればよいでしょうか?
回答
キャリアアップか、人間関係か。
難しい決断ですよね。
私が同じ立場であれば「転職してキャリアップ」を選びます。
今のあなたは「仕事に飽きた状態なのでは?」と考えられるからです↓
仕事に飽きるとは?
ドイツの哲学者ニーチェは「人は成長しないときに、飽きる」と言っています。
スポーツやゲームでも同じですよね。
初めのころは成長も早く楽しいですが、徐々に成長が鈍くなると面白味もなくなり、飽きてしまうのです。
トップアスリートのスポーツ選手ですら、10年以上同じスポーツをするため、ほとんどの人に「飽き」が来るそうです。
よく「続けていく気力が無くなった」と引退する方もいますが、これも飽きの一つです。
人間誰しも飽きは来るものです。
トップアスリートですら、飽きという感情には逆らえません。
飽きたまま続けるのは、かなりの労力と苦痛を伴います。しかもその苦痛は時と共に大きくなり限界が来るのです。
まれに何十年もトップを守り続ける人もいますが、トレーニングメニューを変えたり、場所を変えたり、チームやコーチ陣を変えたり、飽きないための工夫をしています。
新しい刺激を入れて、モチベーションをコントロールしているのです。
しかしこれはアスリートだからできる方法です。
私たち看護師は、飽きたからと言って、業務内容、上司、ポジションを自分で変えることはできません。
できるのは、職場を変えるくらいです。
つまり転職ということになるのです。
転職すると状況は一変します。
業務内容、仕事の進め方、医療方針などは、病院によって大きく異なるため、新しい刺激が入るのは間違いありません。
その刺激が新たな成長となり、キャリアへと繋がっていくのです。
さて。
とはいえ、やはり人間関係も捨てがたいですよね。
でも大丈夫です↓
転職後の人間関係はどうなる?
「人間関係」は、社会人としてとても重要です。
その一方で「仕事の楽しさ」も、社会人には重要な要素です。
今回のご相談は「人間関係は良いのだけど、仕事はつまらない」という内容でした。
これは看護師に限らずよくある話で、私も経験があります。
仕事にも慣れ、日常業務は無理なくこなせるようになり、周りとの関係も良好で、特に不満はない。
でも「本当にこのままでいいのだろうか…」という思いもあるのです。
快適な環境に慣れすぎてしまい、自分の成長が止まっているのは明白でした。
そんな時わたしは、いつも「新しい環境、チャレンジ、やりたいこと、転職」を選んできました。
この考え方は批判もあります。
例えば「仲間との関係を捨てる」という批判です。
確かに転職は「人間関係を変える」行為と言えます。
ただし「捨てる」訳ではありません。
いい人間関係は、転職してもその関係は切れません。
私は10年以上前の同僚達と、ランチに行ったり、バーベキューをしたり、お酒を飲みに行いったり、いまだに懐かしい話で盛り上がれています。
もちろん薄い関係の方とは自然消滅していきますが、コアな関係の方とは簡単に切れるものではありません。
転職は「人間関係の再構築」であり「お付き合いの断捨離」とも言えます。
また「せっかくいい職場なのにもったいない」という意見もあります。
確かに気の合う仲間達は、大切な財産です。
ですが「人間関係を作れた」という、その経験こそが財産なのです。
この経験は「適応力、対人スキル、対話スキル」など色んな呼び方はありますが、看護師のキャリアにおいて非常に重要な能力です。
看護の世界は、学生時代ほど単純ではありません。同僚、上司、先輩、後輩、医師、経営者、医療関係者、他部署、業者、患者さん、ご家族など、利害関係がかなり複雑化します。
そんな中で、人間関係を作れる能力は、強力な武器になります。
その能力は、いくつかの職場を経験することで、より強力になっていき、その結果として「どんなときでも人から頼られる熟練した看護師」になっていくのです。
また「別れは辛い。だから転職しない」という意見もあります。
確かにそういった考え方もあるでしょう。
ですが能力が高い方ほど、逆に考える傾向があります。
「出会えて良かった。これからもよろしくね」
良い関係をそのまま残しつつ、新しい出会いを求めて、新天地へ行くのです。
さて。
ここまで話は、辞めていく側の視点でした。
では残された同僚達は、あなたの退職をどう思うのでしょうか?↓
周りへの影響は?
私は管理職という立場上、退職の相談をよく受けます。
相談の中で「特に不満はない。けど退職したい」という時は、「うっ、飽きが来たんだな…」と考えています。
いちおう転属の話を振ってはみます。
でもいい返事がもらえなければ、その時点で「よし分かった!」と切り替えています。
そこからはお節介な性格を丸出しにして、転職相談に乗っています。
「次は決まってるの?ちゃんと求人調べた?××病院を予定してる?あそこはダメだって!かなりブラックらしいよ。〇〇病院?あそこなら急性期の主任が同期だから内情聞いてみようか?」と、おばちゃん化しています。
経営層からは「ちゃんと引き止めてくれよ」とお叱りもあります。
でもキャリアが理由の転職は、引き止めるのが難しいです(経験上)
こういった看護師は、自分の考えをしっかりもっており、今の職場ではそれが難しいことを理解しているからです。
もちろん強引に引き止める管理職もいます。
ですが、飽きてしまった方々は、遅かれ早かれいずれ辞めてしまいます。それを引き留めても、お互いにとってメリットは全くありません。
それよりもしっかり相談に乗って、良い関係を保ってくほうが賢明です。
辞めてからもランチに誘えてますし、人脈が色んな病院に広がり、情報交換もでき、他の病院の裏情報も聞けたりします。「先輩、また戻りたいです」と出戻り再就職してくれる嬉しいこともあります。
それに一緒に楽しく働いた仲間ですからね。最後は爽やかに見送ってあげたいです。
しかしその一方「退職は残された人に迷惑がかかる」という意見もあります。
これは確かにその通りです。人手不足の看護業界において、誰かが退職するとシフトの穴埋めが大変です。
ただしこれは一時的なものです。
私は何度も同僚の退職を経験していますが、「うっ!退職か…」とバタバタしても、1週間も経てば、いつもの日常になっています。
一人いなくなっても、言うほどの影響はないのです。
「自分がいなくても職場は回る」というのはちょっと寂しい気もしますが、それが現実でもあります。
しかし職場にとっては「早く辞めた方が都合がよい」なんてこともしばしば起こります↓
早く辞めた方が喜ばれる?
周囲の方々は、あなたが飽きていることに、何となく気が付いていると思います。
人の気分は、どうしても表情や仕草、行動に表れてしまいますので。
感情は周囲に伝染します。
人は影響を受けやすいものです。
飽きの感情は、同僚たちにも伝染し、職場全体に負の影響となってしまいます。
管理職からすれば、職場全体のモチベーションが下がり、「退職者が続出する」というケースだけは避けたいです。
そうなる前に、白黒ハッキリさせたほうがありがたいこともあるのです。
また、とあるサッカー選手が「惜しまれるうちが辞め時だ」と言っていました。
これは「ピークエンドの法則(人はピークと最後ほど、印象に残る)」という人間心理です。
落ちぶれてから辞めた人は、どうしても惨めに見えてしまいますからね。
これは転職にも同じことが言えます。
輝いている時期の退職は、そのイメージが同僚の中に残り続けます。
逆に何となくダラダラ働く看護師として辞めれば、そういった人だったと印象付けられます。
それはその後の関係にも影響するでしょう。
人間関係は大切な財産です。
良い関係のまま、次の財産を見つけに行きましょう。
それが自分にとっても、周りの仲間にとっても幸せな結果になると思います。
まとめ
私は幸運にも色んな仕事をしてきました。
看護業務以外にも、マネジメント、クレーム対応、人事、新病棟の開設などなど。
それでもやはり飽きは来てしまいます。
看護という特性上、日々の仕事はそう変わらず、その中でモチベーションを高く保ち続けるのはほぼ不可能です。
そんな時に「何か新しいことをやりたいな」と思うのは自然な感情です。
人の目標は、日々変化します。
新卒1年目の目標は、2年目で大きく変わっているでしょうし、3年や5年、10年と経てば、まったく別になっているでしょう。
病院や仲間達に対する思いも、同じように変化します。
その時に転職を考えるのは、間違いではありません。
成長を求めて、新しい環境を探せばいいのです。
これが「キャリアを積む」という働き方です。
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