病院ごとで違う看護師の教育方法…教育体制の種類とメリット・デメリット

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新人看護師のみなさん、新しく入職した病院でどんな教育を受けていますか?

指導者の看護師が怖すぎてもう行きたくない。
ピリピリしてて気軽に聞ける雰囲気じゃない。
基本放置されてる・・・
課題出すぎもいやだけど、出なさすぎも成長できない。

こんな風に感じている人、今の教育体制で大丈夫ですか?

初めの1年は、新人にとって大きく成長できる期間。
どんな教育体制の中に身を置けるかはとても重要になってきます。

ここでは、それぞれの教育体制の特徴を、実際の体験談とともに紹介しています。

看護師の教育いろいろ

看護師の教育は主に3つがあります。

プリセプターシップ、チーム単位での教育、ジョブローテーションです。
3つともそれぞれ特徴的な教育となっています。

教育制度の違いで、メリット、デメリットが発生します。
それらを一つずつ解説していきます。

プリセプターシップ

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新人看護師は、プリセプティと呼ばれます。
プリセプティは、プリセプターからマンツーマンで指導を受けます。

プリセプターは3-5年目の看護師が選ばれます。
プリセプティと年齢が近く、新人の気持ちが分かるという理由です。
プリセプターは自分の担当する部署をプリセプティに仕事を通して見本を示してくれます。

例えば、アセスメントや看護技術、対人関係や病院のサービスの仕組み、自己管理など。
看護職にとって大事なことを広範囲にわたってフォローしてもらえます。
プリセプティにとっては、大事な看護師一年目を支えてくれる重要な制度です。

メリット

まずは、新人教育の進み具合が把握しやすいです。

プリセプティにとって、今自分がどういうスキルを身につけて、どういう段階にいるのかというのは把握しづらいです。
ですが、プリセプターから色々教わることによって、自分の現状というのを把握しやすいです。
結果、何が足りないのか? どういった学習が必要なのかをすぐに知ることができます。

次に、マンツーマンで安心できることです。

プリセプティにとって病院一年目が色々不安がいっぱいです。
なので、プリセプティにプリセプターが付くことによって病院に溶け込む橋渡しをしてくれます。
さらに、プリセプティはプリセプターと距離が近いので相談しやすいのが特徴的です。

プリセプティにとってはせっかくの看護師デビューです。
その1年目を支えてくれる先輩がいると心強いのではないのでしょうか。

デメリット

まず、相性が悪いと破綻します。

マンツーマンであるということは、お互いの相性が悪いと関係がこじれることがあります。
それは、プリセプティにとっては多大なストレスとなり、病院に行くのも嫌になります。

そして、依存度が大きいと新人の独立が遅れます。

プリセプティがプリセプターに依存しすぎても問題は発生します。
頼りすぎた結果、プリセプティがいないと何もできないという状態にもなります。
そうすると、プリセプターがいないとき何をしていいか分からず混乱することがあるでしょう。

近くに先輩がいてくれたからよかった!

仮名:N・Rさん
病院タイプ:民間病院
看護歴 :1年目

プリセプターシップのお世話になり、無事1年を迎えることができました。
看護学校を卒業してあこがれのICUに就職、ばりばりやれるぞと思っていました。
しかし、一年目にも満たない自分は現場のことが分からず何をしていいかよく分かっていませんでした。

けど、プリセプターの先輩が付いてくれて、ツーマンセルでICUのいろはを教えてくれました。

今現場がどうなっていて、自分がどう動くべきなのか、何をするべきなのか。
そうやってICUについて一緒に教えてくれたので、なんとか1年がんばれました。
困ったときに相談できる先輩が近くにいるのはとっても心強かったです!

思えば、いきなり新人が活躍するというのは難しいですよね。
次の目標は夜勤を一人でできるようになることです!
丁寧に教えてくれたプリセプターの先輩に追いつけるように頑張ろうと思います。

お互いの相性が悪くて最悪のデビューに

仮名:M・Iさん
病院タイプ:大学病院
看護歴 :1年目
教育に不満だらけの新人です。
私の就職した病院は、教育制度が充実しているというのが宣伝文句でした。
なので、しっかり教育してくれるこの病院で頑張ろうと思っていました。

しかし、実際はすぐに辞めました。
それは、プリセプターとの相性が最悪だったからです。

あまりはっきりと言っていただけないプリセプターだったので、はっきり言ってくださいと何回も言いました。
けど、もごもごと口を動かすだけで全然わかりません、正直不快でした。

確かに、伝えたりすることが苦手な人がいるのは分かります。
でも、「最近の新人はうるさい」と先輩たち同士でしゃべっていたのを見て一気に気持ちが萎えました。

チーム支援型教育

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特定の指導者を置かずにチーム全体で指導する方法です。
チームリーダーを中心に、新人を各自の得意分野からバックアップしていきます。
例えば新人1人に対して、チームリーダー、実地指導者、2-3年目、5年目以上というチームを編成します。

リーダーは全体の統括をこなし、実地指導者と新人の状態を常に把握し指導方針を検討します。
実地指導者は、技術や知識の指導や病棟のことを教える人です。
2-3年目は新人と距離の近い相談役となります。
また、5年目は実地指導者と新人の技術・知識のフォローに回ります。

こうして新人を見守る体制を整え、新人看護師をチームの一員として扱います。
新人が分からないことや困ったことがあればすぐに助けることができる即応体制を組織する。
それがチーム単位での教育となります。

メリット

まず、新人の状態を共有しやすいです。

チームが新人の現状を密接に把握しているので、新人に対してのフォローがしっかりされます。
なので、インシデントの発生など、トラブルの発生率がさがります。

例えば、実地指導者が休みの時やリーダーが不在な時など。
新人にとって不安な状況でも相談相手がおり、常にチームがバックアップしてくれます。
新人を孤立させずに、チームの一員として面倒を見ることが大事です。

最後に、スキルが多く身につきます。
複数の疾患に対して、チームの中のAさんはAの疾患、BさんはBの疾患が得意だとします。
新人にとって、Aの疾患とBの疾患どちらも教えてもらうことができる利点があります。

デメリット

まず、連携が維持できなければ教育機能が停止します。

人間関係というのは、壊れたら修復しにくいです。
チーム間で新人に対する嫌悪感があると、新人の孤立が発生します。

新人看護師にとってチームは頼れる存在です。
ですが、チームの意思疎通がうまくいかないと、孤立した新人が現場に放り出されます。

なぜなら、孤立している新人の面倒は誰も見ませんが、仕事である以上は現場に行かなければいけません。
それは、新人にとって多大なストレスで、新人の早期離職につながります。

そして、情報共有の不徹底です。
情報共有がされないと、新人は同じことを何度も教わるといったことが起こります。
結果、新人にとっては放置されたという怒りが強くなります。

親身になって教えてもらえた

仮名:E・Nさん
病院タイプ:大学病院
看護歴 :2年

チーム支援型で看護師デビューしました。
元々希望していた科を違う科に配属されるという自体になりました。
最初は不安が大きかったです。

しかし、チームの皆さんと関わることによってその不安が解消されました。
それは、親身になってチームの人に色々教えていただいたからです。
点滴や採血を実際やってみると分からないことが多く、大変でしたがなんとか形になりました。

最初、チーム制というのは見ない制度だなぁと思って不安でした。
でも、分からないことがあるとすぐに助けてもらえるし、相談できる人がいるのがよかったです。
こんなに素晴らしい制度があるならもっと広まって欲しい。

情報が共有されず同じことを教え続ける

仮名:T・Rさん
病院タイプ:民間病院
看護歴 :1年目

看護師として転職した先でチーム支援制度という研修を受けました。
プリセプター制度を希望していた自分にとって、驚きの制度でした。
しかし、チーム支援を受けてみてこの制度はダメだと言うことが分かりました。

確かに、この制度は先輩看護師が新人を把握し、的確にアドバイスをそれぞれの立場から行います。
でも、自分の状態は全く把握されていませんでした。
1つの疾患に対して、「これ、先週教わりませんでしたか?」「あれそうだっけ? まぁもう一回やっといて」となります。

新人の状況を把握せず別々の人が同じことを教え続けるチームでした。
病院自体が忙しいのか教えるとき以外は放置されています。

なお、メモと学習状況は報告し、疾患に対してはケアできていました。
そういう状況なので、結局何も定着しないまま1年が過ぎていきどうしようかと思っています。
せっかくのチーム制、指導状況を把握してないのはいかがかと思います。

ジョブローテーション

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ジョブローテーションは、希望した部署へ配属される前後に、一定期間さまざまな部署を経験する制度です。
期間は一部所につき数日から数ヶ月というところもあります。
新人はその部署の担当に付いて、部署に関する研修を受けます。

管理職目線で見れば、ジョブローテーションは病院内のスタッフの交流の発展となり得ます。
また、他部署の特徴を知っておくことで、それぞれの部署との折衝などが円滑に行えます。
新人にとっては、自分に合う領域の確認や、新しい技の発見、院内全体の理解などといった複数の効果か期待されます。

メリット

まず、幅広いスキルを体験できます。
多数の部署の経験を積むことは、希望の部署が向いてるかをより知ることができます。

ほかに何が自分に向いているかを体験でき、選択肢が増えることは大きなメリットです。
すでに強く希望の配属先がある場合でも、他部署の疾患を把握しておくことは悪いことではありません。

そして、職場になじみやすいです。
ほかの部署のスタッフと顔見知りになることで、交流する機会が生まれます。
そうすることにより部署外と交友が生まれたり、思わぬフォローをしてもらえたりします。

デメリット

まずは、学習が中途半端になりがちです。
現状の部署に慣れる前に、次の部署に移ってしまう可能性があります。

結果的に十分な学習ができません。
それ以外にも、人間関係が築かれなかったり、その部署がよく分からないまま次へ行くことも。
個人個人によって習熟度は違うので、期間に関して難しい課題です。

そして、学習の度合いに差が付きます。
ローテーションが選択制だった場合ローテーションしなかった同期に置いて行かれます。

ただし、スキルや着眼点の成長があるので、なり得る場合がある、といった程度です。
単純に一つのスキルを磨く出発点が違うという点で、影響は個々人の間から出ません。

良い刺激になった

仮名:E・Wさん
病院タイプ:大学病院
看護歴 :1年

ローテーションが卒後研修としてある病院です。
私は、ローテーションはとても良かったと思います。
というのも、手術やPTCAといった普段目にする機会のない部署を経験できました。

特に手術室では器具の出し方から看護師の動き方まで見学できました。
普段とは違う雰囲気の中、てきぱきと実務をこなす先輩方をみて驚きました。

だから、ジョブローテーション制度は面白いです。
普段触れない部署や人と会うことができるし、違うことに触れるのは言い刺激になりました。
モチベアップにもなるので機会があればまたローテーションしてみたいです。

同期に置いて行かれた

仮名:I・Uさん
病院タイプ:民間病院
看護歴 :2年目

ローテーションするかどうか選択することができる病院でした。
私はローテーションを選択しました。
なぜなら、病院内の部署でいろいろな経験を積みたいと思っていました。

しかし、ローテーションしなかった同僚にスキルで置いて行かれました。
ローテーションはほかの部署のやっていることを把握し、病棟全体の回転に貢献できます。
でも、自分が受けた研修は分からないまま次へ次へと流れていく形ばかりの研修でした。

その結果、同じ時期に同じ科に入った同僚にスキルで抜かれてしまい、不満しかありません。
どうやって取り返すのか、そればかり考えています。

教育体制が整っているか?

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どのような体制を採用したとしても、きちんと人が回らなければ機能しません。
教育体制がしっかりしていることは、新人にとって大きなメリットとなります。

例えば、医療ミスの防止につながり、それが安心となり職場へと定着となります。
その結果、スキルアップを目指すことができ、そこからキャリアアップへとつながっていきます。
つまり、教育体制が整っているところは職場内で良い循環を生み出します。

ですが、形だけの教育であればどうでしょう?
医療ミスが起こりやすく、それが不安となり職場への定着率が下がります。
その結果今いる看護師にまで影響をあたえ、新人にとって安心できない環境ができあがります。

結局、最初述べたように人が回らなければ教育体制は機能しません。
制度ばかり良くても運用するのは人です。
人の行動が慣習を作り、慣習は次の新人のための環境形成を補助します。

新人看護師の方には、是非その病院の教育体制も見て行き先を決定してみて欲しいです。
今の自分の教育環境はどうですか? 
改めて見直してみるのも良いでしょう。

指導者をフォローする人がいるか?

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制度を整えた、人を整えた。
では、整えた人・・・・・・新人の指導者をフォローする体制はどうでしょうか?

プリセプターシップを例にすると、プリセプターは新人教育に大きなリソースを割きます。
リソースを割いた結果どうなるでしょうか?
プリセプター自身の学習時間の低下や、残業の発生などデメリットが多くないでしょうか?

看護師3年目から5年目はまだまだ勉強したり無いこともあるし、やりたいこともあるでしょう。
プリセプターは今までの学習の再発見と、定着というメリットはあるもののデメリットも発生します。

そういったデメリットを解消するために、指導する立場の人のフォローは大事です。
あらかじめ抜けたところの人員を補充しておくとか、教育の時間の短縮のためのマニュアルを整備するなど。
新人教育のためのインフラ作りの中に、指導者へのフォローを盛り込んでおくことが大事です。

指導者以外に相談できる人がいるか?

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新人にとって、どのような制度であれ指導者がつき良き相談先となるでしょう。
しかし、相談先は一本化してしまって良いのでしょうか?
複数の相談先があると、新人にとって安心できる環境ではないでしょうか?

チーム支援制度に見られるように、指導者以外にも相談者を置くことが新人看護師にとって安心できます。
看護師も人間なので、指導者には相談しにくいことというのもでてくるでしょう。
あるいは、指導者が忙しそうにしていると聞きづらいというのがあると思います。

そういうときに役に立つのが、ほかの看護師の存在です。
そして相談された側も指導者と情報を共有することによって、新人をフォローできます。
なので、指導者以外にも新人が相談できる人員を配置するのは重要なことです。

まとめ

あなたの職場は人を育てたいと思っていますか?
これからは職場の「人を育てること」への意欲が新人看護師にとって大事になってきます。

教育制度には主に3つの種類がありました。
自分に合う教育方法を選ぶというのもこれから必要になります。

今の教育に理不尽さを感じたり、不満や不安が強いのなら、他の職場や教育体制をのぞいてみましょう。
これからの看護人生がどうか辛いものではありませんように!

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