救急はやめておけ! 看護師に救急への転職や異動を勧めない本当の理由

救急はやめておけ!

救急で働きたいと考えている看護師のみなさんこんにちは!

救急が舞台になっているドラマや映画って多いですよね。
登場人物は、誰も彼もが魅力的で個性的でステキ!
それが理由で救急に憧れている看護師の方も多いんじゃないでしょうか?
現実にはありえないフィクションだと割り切ってはいても、

  • 誰からも一目置かれる看護師になりたい
  • 周りに影響を与えられる看護師になりたい
  • 一人前の看護師として認められたい

こういった希望や願望を持って救急を希望される方が多いのも事実です。
ですが、ここで再確認して欲しいと思います。

『どうしても救急でなければならない理由があなたにはありますか?』

ここでは救急の現場がどれだけ過酷なのかを紹介しています。
入職・異動してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、充分な情報収集と覚悟をしておきましょう。
余計なお世話かもしれませんが、「それでも救急で働きたい!」という強い気持ちがなければ続きません。
もう一度自分の気持ちと向かい合いながら読み進めてみてください。

新卒からの救急志望はやめておけ

早速ですが新卒からの救急志望はやめましょう。
私は新卒からの救急ですが、「これ実習でやった!」と思うような状況はまったくありませんでした。
何をしていいのか、目の前で何が起きているのかも分からない世界がそこにあります。
自分の存在理由すら失いかけるほどの無力感を味わいました。
周りがすごすぎるのと対照的に、自分の無力さに夢でうなされるレベルまで追い込まれます。
本当にキツイです。

先輩や上司から「ゆっくり」「優しく」指導してもらえるなんて夢にも思ってはいけません。
スピードがすべてですから 、モタモタしてたら罵声が飛んできます。
職場全体が常に緊張感に包まれているので、並の神経では擦り切れてしまうかもしれません。

初療に関わりたくて救急を志望しても、新卒はすぐには担当出来ません。
ある程度の知識と経験を積んでからでないと、足手まといになるからです。
病院の体制にもよりますが、私の働く病院では新卒入職後3年目からぼちぼち入れるようになって、本格的に取り組むことが出来るようになるのは4年目以降でした。

「新卒からは本当にキツイけれどやってみたいならやってみれば?」

そんな無責任な事は言えません。
断言します。
新卒からの志望はやめておきましょう。

精神的・体力的な弱さを感じているならやめておけ

救急の患者さんは予測不能の状態でやってきます。
来院されるその都度、患者さんの状態を確認・把握し、的確な処置をする必要がありますので、精神的な負担はかなりのものです。
更にスピードを求められる状況が多いにも関わらず、ルーチンワークで片付くような仕事は一つとしてありません。
現場は常にピリピリとした雰囲気に包まれています。

しかし、病棟であれば、ある程度の忙しさは予測出来ますし、心づもりも出来るでしょう。
患者さん一人一人と向き合いながらも、ルーチンワークで対応可能な状況は多いはずです。
精神的な弱さを感じているのなら、救急はやめて病棟をおすすめします。

もちろん精神的に強くても、体力に自信がない方では、救急の現場は務まりません。
救急の性質上、24時間どんな患者さんにも対応出来るよう、昼夜同じバランスで看護師が配置しています。
そのため、病棟よりも夜勤当番が多く、体力的にもきついです。

三次救急では、大半の患者さんがストレッチャーで運ばれてきますので、それを押して移動させるのもかなりハードです。
私は体力に自信はある方だと思うのですが、業務が終わって更衣室で一息つくと、しばらく立ち上がれない日もあります。

救急での看護師の業務は想像以上に多岐に渡ります。
救急で行われているほとんどの業務を、看護師が行っていると言っても過言ではありません。
「看護計画の立案・記録」「日常症状観察・バイタルサイン測定・モニター観察」等の病棟看護と変わらない仕事から、「医療機器の管理」「医療材料等の補充・準備・点検」といった、本来は他職種と分担出来そうな仕事まで任されることもあり、多忙を極めます。
休む暇もなく、走り回っている日も少なくありません。

精神的・体力的に自信がないと感じているようなら、救急はやめたほうがいいです。

プライベートが欲しければやめておけ

残念な話です。

新卒にしろ異動・転職にしろ、救急を未経験の看護師が、配属されてすぐに戦力として数えられるようなことはまずありません。
テキパキと立ち回る先輩の姿に圧倒され、オロオロするだけの自分に腹を立てるかもしれません。
希望の救急にやってきて、カッコよく活躍する理想の自分との大きな違いに、ただただ幻滅するかもしれません。
戦力として数えられるまで、あなたは自分の未熟さに歯がゆさを感じ、悔しい思いを懐き続けるでしょう。
その状況を打開するにはどうすればいいと思いますか?

とにかく知識をつけるしかありません。

現場で見たこと学んだことは、家で何度も何パターンもシミュレーションします。
多忙な職場でどれだけボロボロになっても、プライベートの時間を勉強に費やさなければ、自分の未熟さを克服することは出来ません。

診療科を問わない救急の現場では、広い視野と知識を必要とされます。
救急でやっていこうと思うなら、プライベートはないものと思ってください。

知識と技術を持たない救急に意味はありません。
理想の自分になるために、プライベートを削っても常に自分の知識と技術を磨き続ける、それだけの情熱があなたにはありますか?

理不尽と向き合う覚悟がないならやめておけ

救えない命もあります。
どれだけ勉強して経験を積んでも、どれだけ早く治療にあたっても、救えない命があるのは理不尽ですが事実です。

三次救急においては、常に命の危険を抱えた患者さんと向き合うことになります。
担当の医療スタッフ全員で、救命に全力を尽くします。
それで患者さんの命を救うことが出来た時は、言葉にならないほどの安堵感があります。

しかし、治療が間に合わず、目の前で患者さんを看取ることも少なからずあるのが現実です。
力及ばず救えなかったという、その精神的な痛みは、計り知れないものがあります。
そして、救えなかった患者さんのご家族から、心ない非難を受けることもあります。

あなたの力ではどうにもならない、理不尽な死と向き合う覚悟があなたにはありますか?

救急車をタクシー代わりに使うような理不尽な方に遭遇することは稀です。
その代わり、事故・事件・災害、理不尽な怪我や病気を抱えて救急を頼っていらっしゃる患者さんたちはそれなりにいます。

理不尽なことに、一息つける時間すら持てないことも多いです。
さらに救急の仕事には、休憩しながらのんびりやれる類の仕事はありません。
食事休憩を取ろうとしたところへ、救急車が入ってくることも多いです。

休みなく必死で動き続けても、常に救急の現場には理不尽がついて回ります。

どうしても救急でなければならない理由があなたにはありますか?

救急の過酷さをここまで伝えてきました。
だったらどうして私は救急を志望し、今まで続けてこられたのか?
私が救急を志望した理由を書いてみます。

私が看護師に憧れたのは、祖母が看護師だったからです。
転んで怪我をした時、風邪をひいて寝込んだ時、優しく看病してくれたことを今でも覚えています。
その憧れが具体的な目標に変わったのは、阪神淡路大震災です。
被災地からはかなり離れていましたが、私の住んでいた地域もかなり揺れました。
当時、私はまだ小学生でしたが、テレビで報道される悲惨な光景は、かなりのショックでした。
そんな中、「困っている人を助けたい」 と、祖母がボランティアとして被災地の支援に行ったんです。
祖母の行動をとても誇らしく思うと同時に、「自分も誰かを助けられる仕事をしたい」と強く思うようになりました。
「看護師として早く一人前になりたい」「たくさんのスキルを身に着けたい」という理由から救急を選んだのも本音ですが、何よりも、

「突然の災難に見舞われた時、困っている人を助けられる力が欲しい」

そう思ったことが、私の「どうしても救急でなければならない理由」です。
救急は過酷ですが、だからこそ手に入れられるものも多いです。
そこで、私がこれまで救急で働いてきて、手に入れたと思うものについても書いてみようと思います。

確かな自信とプライドは、救急の現場だからこそ得られるもの

自分が一人前になれたとは思っていません。
毎日が反省と勉強の繰り返しです。
無我夢中で走ってきました。
それでも私は、なりたかった自分に限りなく近くはなれていると思います。

一刻を争う状況下で繰り返してきた手技の経験は、間違いなく私のプライドです。
そして、医師や先輩方の叱責や罵声の中で必死に覚えた知識は、間違いなく私の自信を裏付けるものです。
つらく苦しい経験は、絶対に自分を裏切りません。

加えて、救急では、チーム医療が基本です。
多くの人の協力があって、ようやく救命という困難に立ち向かうことが出来るということを学びました。

「医療という分野は、たくさんの関係者から成り立っている。誰が抜けても成り立たない。」

救急の現場は、その縮図のように感じます。
自分の存在が少しでも役に立っていると感じる事が出来るのは、周りで私を必要としてくれる人たちがいるからです。

私は救急での経験から、何があってもやっていける自信とプライドを得られたと思っています。

それなりの余裕とそれなりの度胸は、救急の現場だからこそ身につくもの

日々慌ただしく仕事をしているからといって、それに慣れることは多分ないと思います。
一瞬の判断が命に関わる場面も多いですし、もちろん、救えない患者さんに立ち会うことに慣れることは決してないでしょう。
だからといって、それがプレッシャーかと聞かれたら、今ならそうでもないと言える気もしているんです。

ある患者さんが救命処置後に快方に向かわれ、一般病棟に移られたあとで、わざわざ訪ねて来てくださった時、すべてが報われたように感じました。

それからは、その時のことを思い出すだけで、どんな困難もどうでもよいと思えるようになりました。
新卒のただただガムシャラだった頃に比べれば、それなりに余裕も出てきた気もします。

救急では、一刻を争う状況で常に最善と考えられる判断をしなければなりません。
それは、どれだけ現場を経験しても重い責任には違いないのですが、そのことを恐れたり怯んだりすることはなくなりました。
それなりの度胸は、身についたのかなと思います。

まとめ

2014年のレポートになるのですが、三次救急に勤める看護師の離職率(8.8%)は、看護師全体の離職率(11.0%)と比べて低いという結果が出ています。
加えて、三次救急に新卒で入った看護師の離職率(7.3%)は、三次救急全体よりも低く、新卒看護師全体の離職率(7.4%)よりも低いという結果があります。

この数字は何を現していると思いますか?

私にはこれが、救急を志望する人・救急に配属された人の、強い決意に感じられました。
生半可な気持ちではない、確固たる覚悟を持って取り組むその気持ちの現れなんじゃないかと思うんです。

自分の無力さに打ちのめされることもあるでしょう。
医師や先輩の叱責や罵声に萎縮することもあるでしょう。
精神的にも肉体的にもギリギリの中で逃げたくなることもあるでしょう。
プライベートも勉強ばかりでつらいかもしれません。
涙が止まらないほど悲しいこともつらいこともたくさんあります。

その代わり、救急の現場で得られるものには、とてつもなく価値があると私は思っています。
困っている誰かを助けることが出来るのは、絶対的な知識と技術です。
それが救急の現場では必要不可欠であり、それを身につけることは救急で働くものの責任なんだと私は思います。

最後にもう一度うかがいます。

『どうしても救急でなければならない理由があなたにはありますか? 』

覚悟を持って頷けるあなたなら、救急の現場はきっとあなたを理想のあなたにしてくれるでしょう。

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