看護師が児童福祉施設に転職するための全知識

児童福祉説の風景
看護師の皆さんこんにちわ。
メディカル調査員の川田です。

最近は児童福祉施設で働く看護師が多くなりました。

子どもが心を開いてくれた!
悩みを相談してくれた!
一緒に楽しく遊べた!

やっぱり子供の笑顔は一番のやりがいです。

でも・・・。
現実はかなり厳しいです。
想像以上に大変で毎日のように頭を悩ませます。
複雑な感情の子供たち、一癖も二癖もある保護者、虐待するスタッフ・・・。

「転職やめておこうかな・・?」

不安になりますよね・・。

そこで今回は「児童福祉施設への転職」をテーマに、その実態を赤裸々にレポートしてみたいと思います。
実際の生々しい話もありますよ!

児童福祉施設とは?

まずは児童福祉施設について、おさらいしておきましょう。

児童福祉施設は、細分化すると全部で13もの種類があります。
児童福祉施設の細分化マトリックス図

施設名 役割 種別 コメント
児童養護施設 保護者がいない児童の保護 入所 身寄りのない子供のための施設。一般的に児童福祉施設と言えばココ。近年は虐待を受けた子供が6割と突出している
助産施設 入院できない妊婦の受け入れ 入所 産婦人科に近い
乳児院 身寄りのない赤ちゃんの保護。0~3歳ほど 入所 0歳児が約半数。まさに親代わり。看護師に人気の職場。
母子生活支援施設 家のない母子の保護 入所 経済的理由が多かったが、近年はDV被害が6割と急増した。守秘義務は特に厳しい。また知的、精神障害をもつ母も増えている。
保育所 子供たちの保育 通所 併設された児童グループホームと兼務、という保育所もある
児童厚生施設 子供たちの遊び場、学び場。児童館など 通所 看護師の求人は無い
児童家庭支援センター 児童相談所の補助 通所 看護師の求人は無い
児童自立支援施設 非行少年、少女の更生 通所
入所
感化院とも呼ばれていた
情緒障害児短期治療施設 心の障害をもつ児童の保護。後天的な障害。 通所
入所
上記の非行少年とは違うが、その線引きはあいまい。
知的障害児施設 知的障害をもつ児童の保護。先天的な障害。 通所
入所
近年は自閉症に特化した施設が増えている
盲ろうあ児施設 目や耳に障害をもつ児童の保護 通所
入所
施設の数は少ない
肢体不自由児施設 手や足に障害をもつ児童の保護 通所
入所
重症心身障害児施設 肢体と知的障害を同時にもつ児童の保護。重度の子が多い 通所
入所
看護師需要がもっとも高い

児童福祉施設と言えば、「身寄りのない子供が暮らす施設」というイメージですが、実は色んな種類があるのです。
これらを大まかに分けると「障害の有・無」「通所・入所」の4つに分類されているのが分かります。

ただその線引きは、障害のあるなし関係なく一緒に暮らしたり、通所と入所がセットになった施設があったり、実務上は曖昧なことが多いです。

全国の施設数

  • 児童養護施設:603か所
  • 母子生活支援施設:232か所
  • 乳児院:136か所
  • 児童家庭支援センター:119か所
  • 児童自立支援施設:58か所
※2016年厚労省データより

児童福祉といえば、やはり児童養護施設がダントツで多いです。
最近では未婚の出産が増えたこともあり、母子生活支援施設や乳児院が増え続けています。

施設の運営元

児童福祉の施設は、そのほとんどが公的施設です。
国や県のほかにも、行政から委託された、社会福祉法人、NPO法人など様々です。
児童養護施設に限って言えば、約9割が社会福祉法人です。つまりほとんどが業務委託です。行政の直轄は1割もないくらいです。

社会福祉法人と言えば、宗教系が多いことでも知られています。そのため施設にも宗教色が色濃く出ています。特に多いのはキリスト系でしょうか。日曜日にミサがあったり、食事前にお祈りがあったり、スタッフにシスターがいたり。
転職活動では、施設ごとに文化や雰囲気が全く異なるので、運営元や宗教などの背景も事前にシッカリ調べておきたい所です。

最近の動向

国は、児童福祉施設を「大規模から小規模へ」の移行を進めています。
大規模な施設だと「子ども一人ひとりをシッカリ見れない」という問題があるからです。確かに暴力や犯罪、自傷行為、精神疾患など、一般家庭と比べて多いです。
国はその問題を「家庭的な小規模施設」にすることで解決しようとしています。

ただそうなると問題になるのがお金です。
小規模化は確かに有効策ですが、コスト面で現実的ではありません。
特にスタッフの確保は緊急課題です。子供にシッカリとしたケアをするなら、スタッフの人数が必要不可欠です。ただ現状ではかなり不足しています。

その一方で、施設スタッフの役割は増え続けています。
衣食住、心理面のサポート、家庭復帰支援、学習サポート、自立支援。最近では退職後支援、地域の子育て支援、保護者との調整などの仕事も増えました。
にもかかわらず、それに対する報酬は据え置き…。スタッフが増員できず、結果としてサービス残業や休日出勤が深刻化しています。

という背景もあり、最近の児童福祉は「それなりに忙しい仕事」になっています。

現状の施設規模

国は、施設の小規模化を進めています。

では現状として、どのくらいの規模の施設が多いのでしょうか?

  • 定員20人まで:0.7%
  • 定員20人以上:94.1%
  • 定員100人以上:5.2%
平成23年厚労省調べ

20人以下の家庭的な小規模施設は、たったの0.7%です。
そのほとんどが中規模や大規模な施設です。

家庭的な施設の例

さて。
小規模施設が少ない現状がお分かりいただけたと思います。
でも実は小規模化は進んでいます。

え?少ないのに進んでるの?

はい。そのカギがユニットです。
ユニットとは、少人数グループ(10人以下)をひとつの生活単位(ユニット)に分けてケアするシステムのことです。ユニットごとに専用の居住空間とスタッフを配置して、大規模施設でありながら、家庭的な雰囲気を出せるという訳です。
このユニットが多くの施設で取り入れられています。
家庭的なユニット例

また普通の一軒家を使ったグループホーム型もポツポツと増えています。さらにはご夫婦で常駐スタッフをするファミリーグループホームもあります。
こういった小規模な施設では、料理や掃除、防犯、ご近所付き合いなどが学べるため、子供たちの自立にも効果的だと言われています。

大規模施設の例

大規模施設の例
ユニット化は進んでいますが、5割以上の施設はこの大舎制です。

児童福祉施設の基本的な待遇

待遇面は、施設によって大きく異なります。
病院以上に格差が大きいかもしれません。

ただここでは、一般的な児童福祉施設の待遇についてまとめてみました。

項目 評価 コメント
給料 約15万~28万 病院より給料ダウンする。ただそこまで低くもない。公務員扱いの公立施設は高め。民間はピンキリで格差が大きいことも。
福利厚生 公務員なら◎。民間は△。公務員は年金、退職金も良い。
夜勤 施設によっては宿直があることも。ただし病棟のように働き続ける夜勤ではなく、仮眠をとりつつ、見回りなど。オンコール当番があることも(重心など)
シフト 3交代制が多い。ただ病棟の3交代とは違い、子供たちの生活に合わせているため変則的。
例)
早番:7:00~16:00
遅番:11:30~20:30
宿直:15:00~翌9:00
土日出勤 × 365日稼働のため、休みは不規則。
求人数 × 病院と比べてかなり少ない。最近は非正規化も進んでいる。施設によっては看護師不要。
パート・アルバイト パートの募集はそれなりにある
仕事探し 求人情報は、色んな媒体に分散されているため探しずらい。県や市のホームページ、ハローワーク、地域雑誌、求人誌、転職サイトなどで探す。
仕事の難易度 低い 看護度は低い。感染予防、バイタル、通院、服薬など。重症心身障害施設は、看護度が高い
スキルアップ × 看護スキルは身に付きづらい。医療者としてレベルアップしたい方には不向き。
未経験 臨床経験があれば、未経験でもOK。小児科病棟の経験があれば〇。特に急変対応できる看護師は、歓迎される。また精神科の経験も役に立つ。
新卒 × 新卒は難しい。看護師1人の施設も多く、最低限の臨床経験は必要となる。看護経験2年以上などの制約も

給料

まず前提として施設の多くは社会福祉法人です。

社会福祉法人は、国家公務員に準ずる給与体系となっているため、まずまずのお給料となるでしょう。
もちろん病院よりも年収ダウンにはなりますが、補助金を上手に貰っている施設では、スタッフの待遇も厚かったりします。

ただし施設の給料格差はかなり大きいです。
経営者の方針によっては各種手当、ボーナス、昇給に大きな差がつきます。
良い施設と悪い施設を比べると、年収ベースで200万円近くの差になることもあるため、注意が必要です。

休日

休みは暦通りとはいきません。
スタッフが必要なのは、子供が施設にいる時間帯です。つまり学校が休みの土日だったり、連休だったり、夏休みや春休みだったりが一番忙しいのです。
また看護師といえども、スタッフが足りなければ宿直が回ってくることもあります。子供がケガや事故にあえば、夜間でも駆けつけなければいけません。補導された子を警察署に迎えに行ったりもします(汗)
トラブルが起きるのは意外と夜中が多いのです。

このように基本的には平日に休んで、土日出勤というシフトが多いです。
子育て中の方が働くのは、難しい環境かもしれません。

離職率

正直、児童福祉施設の離職率は高いです。
3年以内の退職は50%以上と言われています。実際の体感的にもスタッフの入れ替わりは激しいと感じます。

児童福祉はやりがいのある仕事ですが、人手不足、不安定なシフト、激務などの離職しやすい環境がそろっています。
特に最近は、施設に求められる役割が増えたともあり、激務に拍車がかかっています。
この仕事はやる気に溢れた方が多いのですが、そういった方ほど燃え尽きて辞めていくのもまた事実です。

児童福祉施設の仕事内容

児童福祉の仕事は、施設ごとに幅が広いです。

ただ共通する点も多くあり、まずはその共通点について、お話いたします。
(施設ごとの仕事内容については、後述します)

看護師としての仕事

児童福祉施設における看護師の仕事は「学校の保健室」と似ています。
子供たちの生活や教育サポートを行いつつ、その合間の看護業務となります。

看護業務は例えば、病児の看護や予防です。急病やケガの応急処置や受診判断から予防接種や健康診断の準備や介助、健康管理や健康状態も把握し、保護者から児童の健康相談があれば、アドバイスをします。
通院の付き添いなども看護師が行っています。
また風邪や感染症の予防に努め、施設内の衛生管理、感染症の対応マニュアルや保健だよりなども発行します。

まさに保健室ですね。

施設の看護師は、基本的に少人数です。「看護師は自分1人」という施設もあるでしょう。子供を通院させるときは、運転免許が必要だったりします(車は施設のものを使います)

ただ、看護の仕事はそこまで多くありません。
どちらかと言えば、養育の仕事の方が多いくらいです。
施設側も「看護もできる養育者」を期待しているでしょう。

このように児童福祉の仕事は、病院やクリニックとは全く違い、看護師というよりも養育者です。低年齢の子が多い施設では、保育士に近いです。養育と看護の間に立ち、子供たちの成長をサポートする柔軟性が求められるでしょう。

養育者としての仕事

看護師も養育者としての役割を求められます。
例えば、心理面のサポート、家庭復帰支援、学習、進学が就職の相談、自立支援など、まさに親代わりです。
昔は衣食住を重視する風習でしたが、今は時代が変わり、役割の範囲はかなり幅広くなっています。

ただし看護師は、ユニットを担当する療育スタッフとは違い、施設全体を担当します。
学校でいうと、療育スタッフがクラス担任で、看護師は保健の先生です。
ということもあり、子供ひとり一人とジックリ向き合うというよりは、広く浅くの付き合いとなるでしょう。
長年担当した子どもの卒業を泣いて見送る、という経験はあまりできないかもしれません。

けれども保健の先生だからこそ相談してきてくれることもありますからね。
そういった楽しみがあるのも、看護師の仕事なのです。

とある看護師の1日

  • 出勤
    07:00

    早番のため7時に出勤。宿直スタッフからの引継ぎ。朝の健康チェック。朝食の準備。

  • 登校見送り
    08:00

    子どもたちの登校準備。熱や風邪の子供の出欠判断。インフルエンザの季節はバタバタ。

  • 掃除や洗濯
    08:30

    子どもたちの登校後は、施設内の掃除や洗濯。他の指導員と一緒に行う。

  • 通院
    10:00

    持病を持った子供の通院付き添い

  • 昼食
    12:00

    昼食。就学前の子供たちと一緒に食べる。食後は順番に休憩に入る

  • 事務仕事
    13:30

    健康に関する事務仕事。健康診断の整理、保険だよりの作成、性教育の準備。体調が悪くなった子供を学校に迎えに行ったりも。

  • 子ども達の帰宅
    15:00

    子ども達が学校から帰ってくる。学校からの連絡事項を確認し、おやつを食べたり、一緒に遊んだり、宿題を手伝ったり。

  • 帰宅
    16:00

    朝の出勤が早いため、夕方は早めに終わる。宿直への引継ぎ

  • 残業や遅番
    17:00

    スタッフの出欠具合によっては残業も。夕食の準備、お風呂、就寝準備など。ケンカの仲裁も。なぜかこの時間帯によく起こる。

  • 中高生帰宅
    19:00

    部活を終えた中高生が帰宅。ご飯の準備。

  • 消灯
    21:00

    小学生以下は消灯。中高生はお風呂や勉強。心理的に夜が遅くなるほど本音が聞けるため貴重な時間だったりする。何気ない日常会話から、いじめや恋愛、将来相談などに発展することも。

児童福祉のやりがい

児童福祉は、やりがいの宝庫です。
臨床現場では味わえないような、ほのぼの、波乱万丈、感動、涙など、色んな楽しみがあります。

そんな児童福祉のやりがいを順番に見ていきましょう。

やりがい1:子どもの人生

児童福祉の一番大きなやりがい、それはやはり「子供たちの人生」でしょう!
児童が「里親への引き取られる」「家庭への帰宅」「社会人となり巣立っていく」ときは、スタッフ一同で大号泣、ということもよくあります。

また、生き生きとした子供たちと過ごす時間は、それだけで貴重です。病院は苦しんでいる方たちの看護ですが、児童福祉施設では、元気な子供たちが相手です。自分が落ち込んでいても元気がもらえたり、励ましてもらえたり、何だかんだで楽しい毎日です。
季節によっては、七夕やクリスマスの飾りつけをしたり、運動会をやったり、地域のイベントに参加したり、一飽きない毎日です。

もちろん、子どもの気持ちを読み取るは難しいものです。でもそれがまた楽しいのです。表情やしぐさを観察し、今の気持ちを理解してあげられる。関係を築くその過程は、それだけで大きなやりがいになります。子供たちは何だかんだで素直ですからね。コミュニケーション方法を模索していくことで得る学びも多いです。

児童福祉のやりがいの多くは「子供たち」です。
ここに喜びを感じれる方には、児童福祉はオススメです。
子どもの人生だけではなく、自分の人生までも豊かにしてくれますよ!

やりがい2:地域の一員

児童福祉は、地域のいろいろな方々と連携して働くことが多いです。
役所や病院、児童相談所、警察、保育園、学校、家庭裁判所などなど。

そのため「地域の一員」を感じられる楽しさがあります。
仕事を通して、色んな方と知り合いになれるでしょう。

ニュースやワイドショーでは、児童福祉の負の面ばかりが強調されています。でも実際には、地域や施設の支援体制は、かなり手厚いものです。

子どもたちはどのようにして守られているのか?

これを内部から見ることで、日本の児童福祉の本当の現状が理解できるでしょう。

その最前線に自分が関わっている!
この誇らしさもまた児童福祉のやりがいです。

やりがい3:頼りにされる

児童福祉の現場に、看護師はまだまだ少ないです。
そのため急なケガや事故などで頼られることも多く、必要とされている喜びを感じられます。
ただ生死に関する心理負担は、急変がほとんどないため、臨床現場ほど重くありません。
この辺りも働きやすさの大きなポイントになっています。

デメリット

さて。
ここまで児童福祉施設のメリットを中心に書いてきました。
ただ現実的にはデメリットのほうが多くあります。
そこでここからは児童福祉施設のデメリットを一気に書き並べてみます。

デメリット1:主役じゃない

まず児童福祉には「看護師が主役じゃない」というデメリットがあります。
児童福祉施設は、養育の場です。
養育における中心は教育であり、看護は補助的なものです。

もちろん看護は大事な仕事なのですが、施設の雰囲気的には、看護よりも養育中心ということです。

そうなるとスタッフの力関係も、養育者が強くなります。施設によっては看護師を軽視するところもあると聞きます。
実際に「看護なんて全然ないじゃん」「なんで看護師だけ給料が良いの」「大きな顔しないで」と心無い言動も言われたりします。
看護師が感染予防を提案しても「そこまでやる必要がない」「今のままで大丈夫」「無駄」などと採用されないケースも多々あります。

デメリット2:看護師が少ない

また施設内の看護師は、自分一人だけということあります。
悩みを分かち合う人がいないのはメンタル面で結構な負担だったりします。

さらに一部の施設は「何十年も務めるスタッフばかりで、閉鎖的な雰囲気だった」という話もチラホラ聞きます。

児童福祉に限らずですが、どこの職場も人間関係は大変です。
とくに児童福祉は、体罰、性的虐待、いじめ、暴力など毎年のように問題になっており、病院以上に大変かもしれません。
看護師にはそのケアや仲裁を求められるため、それなりの覚悟が必要です。

デメリット3:スキルが衰える

児童福祉施設は、医療行為がかなり少ないです。
これは精神的にはかなり楽なのですが、「看護スキルが衰える」というデメリットにもなります。

実際に、長年勤めた看護師が、病院やクリニックへ転職したくなっても「お断りされる」ケースが多々あります。
うまく採用されたとしても、まったく役に立てずに早期退職という話もよく聞きます。
医療現場から離れるのが3年や5年ほどであれば、何とかなるかもしれません。でも10年、20年であれば、かなり難しいでしょう。

そのため児童福祉施設に転職する方は、一時的な転職なのか、一生児童福祉でやっていくのか、をハッキリさせておいた方が良いでしょう。

児童福祉の現場で働く方の声

さて。
ここからは実際に児童福祉の現場で働いている方々の話を見ていきましょう

児童養護施設

30代
病棟3年、クリニック2年、児童福祉5年

児童養護施設を看護師目線で語ってみます。
私が働く施設には、結構大きな施設で、スタッフは30名近くで、そのうち看護師は4名。
子どもは3歳から18歳ほど。健常の子が多いですが、数名知的障害の子もいます。

この仕事は子どもの気持ちを理解しするのが大切です。意思表示が苦手な子どももいますが、行動や表情、言動を観察することから気持ちを汲み取っています。
看護師も、他のスタッフや保護者と連携して児童を見守っていきます。そのため、人間関係で落ち込んだり、意見が食い違っても、上手に付き合っていく必要があります。
児童だけでなくスタッフの健康にも気を配ります。季節の流行性の病気に気を付けてもらうように「インフルエンザの予防接種しましたか?」と声掛けしたり、「今日顔色悪いけど、大丈夫ですか。」と積極的にコミュニケーションをとることで、信頼関係を築いていきます。

信頼関係ができてくると、「この子、あまり口に出して喜ばないですけど、こういう表情のときは楽しんでるんです」「元気そうですけど、ちょっと風邪気味なので、何かあったらすぐ連絡ください」など、児童の気持ちや調子についても保護者から聞くことができるようになっていきます。

しかし、頻繁に病児を看るわけではないので「施設の方針が受け入れられない」「施設長の考え方に着いていけない」「看護師としての意味を感じられない」など、イメージとのギャップを感じたり、人間関係に溶け込めず去っていく看護師もいます。

また施設によっては、虐待もやはり根深いものがあり、今まで3つの施設で働いてきましたが、そのうち2つは結構酷い状況でした。
それを見るのも嫌ですが、指摘できない弱い自分も嫌になってしまうのです…。

児童養護施設は、働いてみないと分からないことも多いです。
転職する方は慎重に選んでください。

児童自立支援施設

50代
臨床8年、児童福祉6年

私がこの世界の飛び込んだのは47歳の時です。
子育てがひと段落し「さあまた働こうかな」と思うも、長いブランクのため病院に戻る勇気がなく、福祉の仕事を選びました。

やはり子供の笑顔は仕事の醍醐味です。私の勤める施設はヤンチャな子供たちが多いですが、一緒にバスケットをしたり、勉強をしたり、地域の運動会に参加したり、子供が日々成長する姿は仕事を超えた楽しみです。

ただその一方で、子供の残酷な運命、過酷な社会環境、理不尽な親御さんなどに対して、私たちができることは少ないのも現状です。そこに無力感を感じる毎日でもあります。
自分の人生をかえりみずに子供を守る素晴らしいスタッフもいます。でも自分にはそこまでの覚悟がなく、その劣等感にも悩まされています。

この仕事は自己犠牲が付きものです。
私のような中途半端な気持ちで働くのはあまりお勧めできないかもしれません…。

乳児院

40代
小児科6年、介護施設3年、児童福祉5年

私が勤める乳児院には、産まれたばかりの子から4歳の子まで20人ほどが暮らしています。
看護師は私一人です。
そんな乳児院での仕事を一通り書き出してみます。

予防接種のスケジュール調整(この時期の子は予防接種がとにかく多い!)
通院(何かしらの障害や持病がある子が多いです)
院内の感染予防
服薬管理
健康記録(看護記録のような)

これらは1日の仕事量でいえば3時間ほどです。
あとは他の保育士さんと一緒に子供お世話です。遊んで、食べて、洗って、着替えて、寝る!
まだ衣食が自立してない子ばかりなので、食事や着替え時はバタバタとした忙しさです。インフルエンザの季節はさらに大変!
うちの施設では看護師も夜勤アリなので、授乳や夜泣きなど、久しぶりにお母さんに戻った感じで、嬉しいやら、忙しいやら、懐かしいやら、色んな感情を楽しめています。

ただやはり医療者としてのプレッシャーは感じます。
看護師は私一人だし、医者もいないし、疾患をもった子も多いし、全ての医療判断が集中してきます。
最近は、小児脳性麻痺、ダウン症児、喘息、未熟児の受け入れも多く、児童福祉と言えども医療のレベルは求められます。
小児科の経験が大変役立ってはいますが、この先もずっと看護師としての役割を務められるかは不安があったりします。

乳児院で働きたいという若い看護師さんが多くなったと聞きますが、やはり一度は小児科を経験しておいた方が良いと感じています。

児童福祉施設のQ&A集

児童福祉の将来性は?

将来、児童福祉で食べていけるかは、心配の種だと思います。

結論から言えば、将来もそう困らず食べ行けるでしょう。
国の長期政策を見ても、子育てや福祉に力を入れており、仕事は今後も増え続けていくと推測されています。
社会的なインフラレベルで見ても、児童福祉は必要不可欠です。福祉のインフラが不安的な国は、犯罪率が高くなるため、日本政府としてもここだけは死守していくでしょう。
また需要の面で見ても、日本の経済状況が今後も悪くなり続けるため、経済的なネグレクトによる保護児童が増えていくと予測されています。

ただ心配なのは「施設から地域へ」をスローガンにしたノーマライゼーションの動きです。
障害者向けの施設は、その一部を縮小する傾向があります。実際に成人向けの障害者施設は数を減らしています。

この傾向が、児童福祉の分野にも広がる可能性もあります。
ただし児童福祉に限って言えば、減らせないほどギリギリの状況のため、大幅な変更が行われる可能性は少ないと思われます(推測および、期待ですが…)

このような事情もあり、児童福祉の仕事は「心配な面もあるけど、まあ大丈夫かな」という感じです。

小児科経験は必要?

小児科の経験が無くても大丈夫です。
ほとんどの看護師が小児経験なしで転職してきますし、子供たちは基本的に健康ですから医療行為はほとんどないのが実情です。

ただ緊急事態が起これば、看護師としての対応が求められます。
その時にはやはり小児科の経験が生きてきますし、対応できる看護師が重宝されます。

小児科の経験は必須ではありませんが、あれば役に立つ可能性が高いです。

スキルアップできる施設は?

障害や疾患を持った子が多い施設は、医療行為もあるため、

例えば、訪問看護や重度障碍児の胃婁をするような勤務先ならスキルアップが望めるでしょう。

ただ病院と比べると、どうしても医療業務は少な目です。
スキルアップがしたいのであれば、やはり病院がオススメです。
「でももう病院は嫌…」という方は、病院以外で活躍できる職場を探してみましょう。
参考:看護師の資格を活かした病院以外の仕事

働く看護師の年齢層は?

40代、50代の方が多いです。
最近は60歳の定年後に始める方も増えてきました。

逆に30代の方は、かなり少ないです。
学校が休みの時ほどシフトに入らなければいけないため、家庭との両立が難しいのが大きな要因だと言われています。

また20代の方も少ないです。
やはり看護スキルは身に付きずらいため、敬遠されているようです。
私個人としても、若いうちは看護スキルを身に付けられる職場が望ましいのではと思います。

看護師は補助金目当て?

施設によっては看護師がいると補助金が出ます。
そのため補助金目当てで看護師を雇う施設もあります。そういった施設では看護師としての仕事が少なく、立場もかなり弱いため、働きづらいかもしれません(逆に楽という声もありあますが、汗)
実態を探るには、入職前にボランティアをしたり、働いているスタッフから話を聞いたり、転職エージェントに調べてもらったり、情報を集めて見極めることが大切です。

まとめ

いかがだったでしょうか。
児童福祉施設は、やりがいも多いですが、大変な面も多くありました。
施設によっては、給料が不当に低かったり、スタッフの質が悪かったり、特殊な経営者だったり。

また病院とは環境が大きく違うため「自分がやっていけるのか?」も悩ましいところです。

施設によって当たり外れが大きいため、「思ってた職場と違った」「仕事が合わない」「もう辞めたい」という失敗談をいくつも聞いています。

転職の失敗を無くすには、例えば転職サイトがよく利用されています。
転職サイトに登録しておくと「あそこは経営者が…」「全然昇給しない」「あそこはブラック」など、施設の内情を教えてくれるので、転職の失敗が本当に少なくなります。
地域の給料相場や転職事情も教えてくたりもします。
また公開前の求人をイチ早く教えてもらえるため、条件の良い職場を見つけやすくなったりもします。

転職は人生を左右する大事なイベントです。
転職に詳しい方にアドバイスをもらって、失敗を少しでも減らしたほうがいいでしょう。

しかも料金は無料です(施設からの求人費で運営されている)

実際に最近は、20代30代の若い方に人気があり、登録する看護師が多くなっているそうです。
(特に転職1回目、2回目という方が多いそうです)

その中でも一番人気は、大手で有名な「看護roo」です。
ココは情報量が膨大で、転職がかなり有利になるため、本当にオススメですよ。

児童福祉施設への転職活動の第一歩としてまず登録してみては。
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こんな記事も参考にどうぞ。

看護師が転職で失敗しないための準備マニュアル
大損してた!看護師が知っておきたい残業代のこと
看護師を辞めるのはちょっと待ってください!