インシデントは看護師にとても大きなダメージを与えます。
「気を付けていたのにやってしまった・・・」
「みんなに仕事できないヤツって思われてるかも・・・」
「次も起こしてしまうかも・・こわい」
しばらく落ち込んで頭から離れませんよね。
そんな時、みんなどう乗りこえたのでしょう?
なにがきっかけで立ち直れたのでしょう?
ここでは看護師のインシデント体験談から、みんなの乗り越え方をみていきます。
インシデントから立ち直った看護師
インシデントを責めない職場
N.Bさん(26歳)
民間病院
3年目の看護師です。
初めてインシデントを経験したのは新卒で入職して半年くらいの頃でした。
そこそこ仕事にも慣れてきて、緊張が緩んでしまったのかもしれません。
点滴の投与速度を読み違えてしまったのです。
幸い患者様に影響はありませんでしたが、とんでもないことをしたという罪悪感でパニックに。
先輩は何かとフォローしてくれましたが、ものすごく落ち込みました。
看護師失格だとまで思えてきて、退職まで考えました。
そしてその後、師長から長めのお説教をされました。
ですが、感情的な言葉で責められることはありませんでした。
「患者さんには申し訳ないことをしたけれど、学ぶ機会をもらったと考えて今後の私たちの看護に活かしましょう。」
と静かに言われたことが一番こたえましたが、それで気持ちを切り替えることが出来て立ち直れた気がします。
インシデントが起きた後に周りがどう対応するかで、乗り越えられるかどうかが決まると思います。
今はあの時の師長と同じ言葉で、後輩たちを指導しています。
先輩が一緒に改善策を考えてくれた
M.Eさん(27歳)
民間病院
6年目にもなるのに、未だにインシデント起こすダメ看護師な私です。
インシデントを起こした時って、やってしまったことにとらわれて、なにもかもが終わってしまったように感じてしまいます。
ですが、起こしてしまった失敗は、過去に戻れない以上どうにもなりません。
だからこそ前を向いて「これからどうしていくか」しかないんですよね。
私が初めてインシデントを起こした時も、やっぱり同じように世界の終わりを感じていました。
でもその時先輩が、
「やってしまったことよりも、同じ失敗をしないようにこれから気を付けていこう。」
と言ってくれて、私がしたことを責めずに、これからどうするかを一緒に考えてくれたんです。
それがきっかけで、私はインシデントを乗り越えて前を向けるようになったと思います。
それからは、点滴への薬剤注入忘れとか、誤薬とか、一回間違ったらもう二度と間違えない。
同じ失敗だけはしないように、毎日緊張感持って仕事してます。
そのことを教えてくれた先輩と、同じように出来ているかは分かりません。
でも、私も後輩には同じように言ってます。
偉そうに。
職場の注意を喚起できた
K.Fさん(30歳)
クリニック
看護師8年目で、今の職場は3年目。
自分で言うのもアレなんですが、私インシデントとはあまり縁がなく…。
そんな私ですが、やっちゃいました。
書類の入れ間違いからの誤薬投与。
インシデントレポート書きながら、退職願いの書き方あとで調べようって考えてました。
鬱々とした気持ちでレポート出して、師長からも「あなたらしくない」とか言われたりして、そんな言葉慰めにもならんし「次は何の仕事しようかな」なんて考えてました。
翌日のカンファで私のミスが堂々公開されて、
「あー看護師人生も今日までか。みんなありがとう。」
なんて思いながらうつむいてたから、匿名なのに誰もが私が犯人だって気付いてましたね…。
カンファ終わって病棟戻る時に、新米のペーペーが真面目な顔して、
「私もこれやるときは気を付けなきゃ!」
て気合い入れてるの見て正気に戻りました。
私が起こしたインシデントはダメなことだけれど、それでも他のスタッフの注意を喚起させることが出来た。
そう考えたら、ただ凹んでるだけの自分じゃダメダメじゃんって気付きました。
そのことに気付かせてくれた新人さんありがとう!
失敗しない完璧な先輩でいたかったけれど、失敗してもちゃんとそれを糧にすることが出来てこそ先輩だよね!
もう二度と間違わないぞ…。
自分の失敗談を聞かせてくれた
I.Hさん(23歳)
公立病院
看護師1年目。
初めてのインシデント。
検査のために中止になってる薬をいつもの流れで投薬。
先輩が見つけて青くなって、それ見て白くなった。
先輩も急によそよそしいくらい黙っちゃって、私もごめんなさいしか口から出てこなくて。
患者さんに迷惑かけたのはもちろんだけど、これで先輩から呆れられて嫌われちゃうのかなって思ったらもうひたすら悲しくて。
インシデントレポート二人で書き終えて、師長から一頻りお叱りの言葉をいただいて、重苦しい気分で帰ろうとしたとき、先輩から「今日これから時間ある?」って言われた。
「はい。」って答えたら、居酒屋連れて行かれた。
食欲なんて皆無だし何も喉を通りそうになかったのに、「いいから飲め」って生中のジョッキ目の前に置かれた。
「えーと。私の初めてのインシデントはね…」
先輩の失敗談を脚色マシマシで聞かせてもらった。
漫画みたいだなって思ったけど、嬉しくて泣いてしまった。
インシデント起こしたら反省というか猛省するし、お先真っ暗みたいに感じるし。
だけど先輩のおかげで私は大丈夫だ。
インシデントから立ち直れなかった看護師
居場所をなくした
F.Nさん(24歳)
公立病院
看護師2年目です。
名字が似ている患者さんの薬を間違えるというインシデントを起こしてしまいました
何事も何度も確認することだけは、それまで一生懸命やってきたつもりでした。
ですが、この時だけは気の緩みがあったのか、確認を怠ってしまいました。
そのことで、師長からも先輩からも散々怒鳴られ、インシデントレポートも何度も書き直しをさせられました。
二度としないことを約束しましたし、眠れない毎日を過ごすくらい反省しましたが、後悔の念は消えませんし、罵声を思い出すたびに身体が震えます。
その後、レポートが院内に共有されてからは、「仕事できない」「こんなミスありえない」「これはヤバい」などと陰口を言われるようになり、周りの評価も一気に下がりました。
それからは、どれだけがんばろうと思っても、自分がダメな人間であることには変わりない気がして、逃げるように退職。
当時は急性期でバリバリ働くことにやりがいを感じていましたが、いつかアクシデントを起こすんじゃないかという不安から、今は療養型の病院で働いています。
自分は本当に役に立たないダメな人間なんだと思いますし、完全に自信を失いました。
いつか事故を起こすかもしれない自分は、ただの危険な人間としか思えません。
かといって私にあるのは看護師免許くらいなので、今も毎日怯えながら仕事をしています。
ダメな自分が許せない
H.Kさん(29歳)
民間病院
ミスをしない人間ほどミスに弱いです。
「人間は誰でもミスをします。」
と新人の時に言われて、「きちんと確認していればミスはしない」と勝手に思っていました。
いわゆる優等生というやつで、周りからもチヤホヤやれていい気になっていたと思います。
インシデントレポートを書く同僚を、口に出さないまでも「看護師の資格なし」なんて見下していましたし、今から思えば何様だったんだろうっていうくらいの傲慢な人間でした。
私が初めてインシデントを起こしたのは、看護師4年目でした。
医師が書いた指示を読み違えて、点滴の投与量を間違えました。
このミスは私じゃない。
どうにか誤魔化せないか。
そんなことを考えている自分に気付いて絶望しました。
自分がこれまで蔑んできた「看護師の資格なし」なのは、まさにその時の私でした。
同僚たちは、私を気遣って言葉をかけてくれていたのかもしれませんが、
「あなたでもミスをすることがあるんだ」
「めずらしい」
「大事にならなくてよかった」
その言葉すべてが、自分を責めているように、馬鹿にしているように聞こえてしまって、気が狂いそうでした。
本当にショックで、師長にしばらく休職したいと申し出たところ、「人間は誰でもミスをします。」と言われて、何度も謝って泣きました。
ミスを許せない人間は、結局自分を許すことができません。
そんな私には、看護師を続けていくことは出来ませんでした。
吊し上げに耐えられない
E.Oさん(26歳)
公立病院
公立病院に勤務している3年目の看護師です。
公務員という立場もあってか、医療事故に対する警戒が尋常ではない職場で、正直息が詰まります。
医療事故はあってはならないことだし、対策が大切なことは分かっているつもりです。
ですが、うちでは患者さんの安全よりも「インシデントを出さないこと」の方が目的になってしまっているように感じます。
インシデントが起きたらまず誰がやったと責められ、カンファで何度も詰められます。
ミスをした本人が一番落ち込んでるし後悔しているのに、犯人の取り調べのように何度も何度も分析という名目で呼び出されて責められるので、その分周りからの目も痛いです。
そんな状況ですので、先輩たちや同僚の中には、インシデントを報告しない人がかなりいます。
インシデントを報告することで、面倒な状況にしかならないことを分かっているからです。
私は先日報告した患者様の自己抜管の責任を取らされました。
「最終施行者の確認不足で抑制が甘かった」という理屈でした。
患者様の容態に影響がなかったことこそ幸いでしたが、そのことで何時間も無駄にしていることが苦痛でたまりません。
毎日辞めたいと思いながら仕事をしています。
今では職場に対する不信感しかありません。
いつか重大なアクシデントの責任を取らされるんじゃないかと怯えています。
ただ公務員という立場に安心感を感じているのも確かで、転職には踏み出せないでいます。
ミスを押し付けられる
C.Rさん(25歳)
クリニック
看護師2年目です。
なんで私ばっか?
そう思わずにはいられない毎日に嫌気がさして転職しました。
ただでさえ仕事行きたくないのに、インシデント起こしたあとの病院への行きたくなさは普段の10倍くらい。
周りの目も冷たければ、自己嫌悪も酷い…。
ミスはあってはならないことです。
自分でも悪いことをしたという自覚はありまし、ひどく落ち込みます。
責任が自分にあることも受け止めているつもりです。
二度と同じ間違いをしないようにしなければと思います。
それが自分がやったことであればね。
先輩のカルテの記載ミスを見つけたのでレポートを出しました。
同じミスをしても、報告しなかったり見て見ぬふりをする先輩や同僚がいるんですが、それをやんわり指摘したら険悪な空気に。
それからは、自分が関わってないミスまで押し付けられるようになりました。
まったく意味が分かりませんでした。
患者さんの安全を守るための医療機関でこんなことがまかり通るの?
このままだといつ人殺しに仕立て上げられるか分からないと思ったので、辞めて転職しました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
職場や同僚からのフォローがあるかないかは、インシデントを乗り越える上で非常に大きいです。
病院の方針、周りの人や上司の対応一つで、インシデントに対する認識も変わります。
それとは逆に、インシデントを必要以上に責めたり、バカにしたり、追い打ちをかけるような職場は危険です。
そのプレッシャーが更なるインシデントを誘発して、職場内に悪循環を生み出します。
人はミスします。
インシデントから立ち直れるかどうかは、本人の精神力の強さの問題ではありません。
それを受け入れて改善していこうとする組織の仕組みや、スタッフとの関係が一番大切です。
⇒看護師のインシデントと医療ミス事例集
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