人事が暴露!転職に強い看護師が不採用になる理由とは?

不採用になった看護師

「先輩…、面接落ちました…」

先日、後輩の看護師が相談してきた。
看護師であっても、落ちるときは落ちるのである。

私は現場で働きつつも、人事業務もしているため、後輩が不採用になった理由が何となく分かる。
とは言え、不採用の理由は、病院によって大きく異なる。

さてさて。
実は半年ほど前、色んな病院の人事担当者が集まり「不採用にした看護師」について座談会を開催したことがあった。
ということで、今回はその時の話をまとめてみた。

※追記
後輩向けの記事です(20代の看護師。独身)
座談会は2時間ほど。


参加者は8名。病院の人事部、某医療法人の理事、訪問看護経営、クリニック経営、看護主任、転職コンサルタント(元、医療法人の人事課長)など。

不採用の理由ランキング

「どんな看護師が不採用になるの?」

不採用になる看護師には、一定の傾向がある。

もちろん、採用方針は病院ごとに異なる。
病院の規模、経営の方針、病院文化、経済事情などによって、大きく左右される。

ただ、どこの病院にも共通する不採用理由もあったため、ランキングにしてみた↓

  • 1位:経験が少ない
  • 2位:ない(不採用にしたことがない)
  • 3位:条件が合わない
  • 4位:すぐ辞めそう
  • 5位:人柄
  • 6位:他者に決まった
  • 7位:その他

↓これら不採用理由の裏側を整理した。

1位:経験が少ない

人手不足の看護師と言えども、経験の少なさは不利になる。
実際、経験不足が理由の採用は、一番多く聞かれた。

第二新卒

1年目~2年目ほどの看護師。

第二新卒は、受け入れが難しい。
不採用にするケースも多い。書類で落とすことも。

特に1年未満の看護師。
既に新卒を確保しているし、何人か退職するのを見越して多めに採用している。

ただ離職者が多い年度には、1年未満の新人を採用することもある。
現スタッフとのバランス次第。若手ばかりだと業務が回らずきつい。逆にベテランばかりの職場は後々きつくなる。

また新人研修のタイミング次第でもある。
年2回、春と秋に新人研修している病院もある。

ただしこれらは大病院の事情。
看護師の確保に困っている中小病院であれば、受け入れOKなことも多い。
時期によらず、採用するケースもある。
ただし、中小ほど教育体制が悪くなる傾向もある。第二新卒なのに即戦力を求められたり、プリセプターなしだったり、完全放置というケースも。経験が浅いうちほど、大きな病院で学ぶのが無難。

第二新卒は、3年目、5年目といった中堅に比べると、採用が難しい。
病院の求人事情、新人研修、現スタッフとのバランスなどによって左右される。
つまりタイミングが重要。

そのため第二新卒は、病院側の都合の良いタイミングに紹介してもらえる、エージェント経由が多い。

未経験の診療科

看護師の転職は、未経験の診療科というケースも多い。
診療科へのこだわりよりも、通勤が楽、定時上がりできる、給料、シフト、福利厚生など、生活重視の看護師が増えている。

ただし未経験OK・NGは、タイミングによる。
補充したい人員が、ベテランの代わりであれば即戦力、新人の代わりであれば未経験OKとなる。

また診療科によっては、臨床経験の有無が重要になる。
急性期などは、病棟経験のない人は厳しい。

また経験が特殊な看護師(外来、クリニック、美容外科、精神科、介護施設、訪問看護などしか経験のない)は、採用しずらい。

逆のケースだが、職場に不釣り合いなハイスペックの人が来ても対応に困る。
介護施設に、国立医大の元主任の方を採用したこともあったが、入職早々に現スタッフとの対立が酷く、丁重に退職していただいた。

つまり未経験の診療科は、看護師の経歴や基礎スキルと、求められる人物像のマッチングが重要となる。

その他の経験

パソコンが全く使えない。電子カルテのタイピングができない。
持病。よくあるのが腰痛持ち。職業病だが、あまりにも重度だと厳しい。できない仕事が多いと現場から不満が出やすい。

2位:ない(不採用にしたことがない)

「応募を断ったことがない」
「人を選んでいる余裕がない」

そういった声も多かった。
そのくらい人手不足。

看護師に限らず、医師、薬剤師、療法士は、応募があればほぼ100%内定を出しているという病院も。
中小やブラックと言われる病院ほど、その傾向が強い。

もちろん人を見極めるのは重要。
特に協調性がなさそうだったり、人間関係でモメそうな方は、採用すると職場崩壊にもつながる。

その結果として離職率の高い職場になる。

離職率が高いと、大手の紹介会社は紹介してくれなくなる。
ますます人手に困り、ハロワや地域求人誌、零細の紹介会社だけに頼ってしまい、悪循環に。
離職率の高い病院は、労働環境が悪く、職員からの紹介もほぼない。

人が辞めない環境を作りたいが、医師やベテラン看護師の影響が強く、難しい。

3位:条件が合わない

「ピッタリの人がいない」

これもよくある話。
病院と看護師、双方の条件がぴったり合うなんてこは、ほぼない。

最近では、看護師側の条件も多様化しているため、折り合いをつけるのが難しい。
それでも努力しているが、そのギャップが大きいと不採用にするし、内定を出しても辞退が多い。

給料

給料額が問題で不採用にすることはほとんどない。面接中に希望の給料額を提示してくる人がほぼいないから。その代わり、採用後に給料額が不満で辞退したり、短期退職したりというケースはよくある。ただ最近では人材紹介の担当者が代わりに給料交渉に入ることが多くなった。給料額は多少増えてしまうが、問題も起こりづらく、辞退を避けられるのため、病院側としてもありがたい。

ポジション

主任やリーダーをやりたいという要望はよくある。ただし管理職は重要なポジションゆえに、外部からの採用は少ない。また経験以外にも、人柄や適性も重要となるため、選考が難しい。複雑な管理職や専門職を募集するときは、人材紹介に間に入ってもらい、しっかり厳選している。

福利厚生

託児所、駐車場、寮など。
タイミングによっては空きがなくお断りすることも。また採用決定後に「駐車場があると思ったのに」と言われて困ったことがある。確かにあるが患者さんや役職者しか使えない。面接中にしっかり確認したほうがいい。エージェントが間にいたらしっかり話を詰めてくれるので便利。

入職日

即戦力が欲しい時は、あまり長く待てない。「入職は3か月先」と言われても難しい。若手が欲しい時はある程度長く待てる。

奨学金の建て替え

お礼奉公中の転職は多い。その際に問題になるのが奨学金。
非公式だが立て替えている病院も。
ただし立て替えるかどうかは、金額や看護師のスペックによる。断ることが多い。
立て替えている病院も少なく、また公表していないため、人材紹介経由が無難。
参考:奨学金のお礼奉公中に転職するには?

夜勤なし

最近は独身者でも夜勤無を希望する人が増えた。

夜勤なしと言えば、外来が人気。しかし人気職であるがゆえに空きがなく不採用にすることも。中途者よりも、子育て中のスタッフの転属を優先している。
また病棟で夜勤なしを希望する人もいる。正直厳しい。例外として、ベテランの実力者、または今はできないがいずれできるという場合は、採用することも。
また夜勤専従者の多い病院では、夜勤なしOKなこともある。
参考:夜勤専従のメリット、デメリット

固定休み

正月やGW、その他繁忙期の固定休み。
現場からの反発も多いため、配属先の師長の考え方によっては不採用に。

定時上がり

ほとんどの方が希望している(口に出さないにしても)
配属先による。

特殊なシフト

土日休み、時短シフトなど。
昼に2時間ほど休憩が欲しい(家庭の事情)という要望もあった。

なるべくなら応えたいが、現スタッフからの反発もあるため、難しい。
現スタッフであれば職場の雰囲気によっては許されることもあるが、新しいスタッフだと現場の理解を得るのは困難。

仕事内容

本人のやりたい事と、実際の業務の隔たり。
あまりにも違っていれば不採用にすることも。本人から辞退の割合が高い。

4位:すぐ辞めそう

病院としては、なるべく長く勤めてもらいたい。
すぐに退職されると時間、労力、お金など、コスト的な負担が大きい。
また人事担当者の評価にも影響するため、特に気を付けている。

ライフサイクル

結婚、妊娠、進学、親の健康状態など、辞めそうな予兆がある。
こういった方はその他条件がピッタリでも不採用とすることも。

もちろんライフサイクルに合わせた離職は、女性の職場ではよくある話。
ただし面接中に予知できれば、採用を見送ることもある。

またそれら情報を知っていながら、隠している悪質な人材紹介も。
半年後に留学した看護師、開業予定だった医師、結婚する予定だった看護師など。ご本人達は口をそろえて「人材紹介に言ってあったので了承済みと思っていた」と。こういった人材紹介には要注意。

短期間で辞めている

短期間で退職を繰り返している人は、大きなマイナス点となる。
面接で理由を尋ね、その回答次第では不採用にしている。

転職回数はそこまで気にならない。
今は誰でも転職する時代。

お祝い金ありの人材紹介

一時期「お祝い金退職」が横行した。
人材紹介から貰える「お祝い金」欲しさに転職を繰り返す行為。
病院界隈で問題になった。

一部悪質な業者が紹介料を稼ごうと、看護師に話を持ち掛けていた。
それを受けてしまう看護師側のモラルの問題でもある。

ただし国から「同じ人へ、2年以内に求人を紹介するのはNG」と通達された。
またそういった悪質な業者は、病院側で情報が共有され、激減した。

今ではお祝い金がもらえる人材紹介はかなり減った。
ただしまだ一部で存在しており、そういった業者からの紹介だと警戒する。

・・・

人事としては短期退職が怖い。
とはいえ、職場との相性もあるし、それは働いてみないと分からない。人それぞれ辞めざるを得ない理由もある。
そういった時は、早めの退職がありがたい。
仕事を覚えたころに辞められるのが一番困る。

5位:人柄

大切。
患者さんにとっても、同僚スタッフにとっても。

面接中の態度が悪い

元気がない。意欲がない。やる気が伝わってこない。
退職理由をはぐらかされた。
自己アピールに「特にない」と回答。
前職場の悪口。
服装がだらしない。派手なピアス、ネイル。まさかとは思うがその格好で仕事するのではと不安に。
遅刻。最低限連絡を。
志望動機が適当。「何となく」「とりあえず」など。しょうがなく選んだという印象。
下調べしていない。せめてホームページくらい見てきてほしい。
その他、人の話を聞かない、敬語を使わない、面接中に電話に出るなど。

履歴書に問題がある

字が汚い。せめて丁寧に。
顔写真が貼ってない。
履歴書がコピー。
空欄ばかり。
職歴が省略されすぎている
他院用の履歴書を使いまわす

トラブルを起こしそう

患者さん軽視。「患者が」と「さん・様」などの敬称を付けない。
雑用軽視。看護記録、清潔業務、その他雑用などを軽視する。医療行為にしか興味がない、または看護自体に興味がないなど。
学習意欲がない。
労働意欲がない。

どれか1つで判断するというよりも、積み重ねられて、一定値を超えた時に「この人は不採用かな…」となる。
面接中だけではなく、応募の際のやり取り、病院見学、エージェントからの評価なども参考にしている。

病院見学中も人柄を見ている。
応募者の情報が多いほど、ミスマッチを防げる。
病院見学は、応募者から見ても病院の内情イメージしやすくなるため、お互いにとってメリットがある。

またエージェントからの第三者目線での情報も有用。ハロワや直接応募との大きな違いはここ。特に大手の人材紹介は、事細かに教えてくれるため重宝する。応募者から見てもミスマッチが減り、短期退職も少なくなるため、有用。

6位:他者に決まった

今の看護業界は、求人を出してもなかなか人が集まらない。
その一方で、複数の応募が重なることもある。

人気病院

有名な病院は、応募も多い。
待遇が良かったり、教育体制が整っていたり、メディアによく出るような病院。

こういった病院は、看護師の確保にそれほど困ってもおらず、一定の期間しか求人を出さない。(2018年度の第2回中途採用は7月1日~7月14日まで、など)
それがさらなる応募重複となり、その結果として不採用の確率も高くなる。
コネやタイミング、面接対策などが重要。

特にコネは意外と強い。知人からの紹介は優先されることも多々ある。
優良エージェントからの推薦者もミスマッチが少なく、優先している。

求人が出ない病院

人が辞めない病院は、求人を出さない。
こういった病院は、出戻り再就職者も多く、ますます求人が出ない。

稀に空きが出て、求人を出すと応募が殺到する。
選考にコストがかかりすぎるため、ハロワやサイトに出さず、非公開で募集することも。スタッフからの推薦だったり、人材紹介など。

転職シーズン

春先、夏のボーナス前後、秋始め、年末年始の転職シーズンは、応募が増える。
求人量も増えるが、一部の優良病院に応募が集中しがち。

人材紹介は、早くから求人情報をキャッチしている。
そのため人材紹介に登録しておき、条件良い求人や、狙っている病院の求人が出てきたら、連絡がくるようにしている看護師も増えているそう。
正式に求人を出す前に採用が決まることも。

それを見越して人材紹介に登録する看護師が増えている。
ただし零細の人材紹介は、転職を急かす傾向がある。大手なら期間に余裕をもって転職活動ができるため、人材は大手に集中している。

まとめ

病院ごとに求人事情は異なる。
ただ、不採用の理由に関してはほぼ似ていた。

1位:経験が少ない
2位:ない(不採用にしたことがない)
3位:条件が合わない
4位:すぐ辞めそう
5位:人柄
6位:他者に決まった
7位:その他

パーフェクトな人間はいない。
誰でも1つや2つは、弱点を持っている。
ただし看護師であれば、人手不足ということもあり、採用される確率は高い。

それでも不採用になるのは、問題がありすぎたり、大きすぎたりする時。

自分ではわからない欠点もあるだろうし、特殊な勤務条件を希望することもあるだろう。
そういった時は、誰か第三者に相談するのが良い。

人事経験のある友人だったり、ハロワの職員だったり、人材紹介の担当者だったり。
こういった方々は、転職のプロである。

難しい条件であっても、対策は練ってくれる。
時にはコネも使ってくれる(コネは案外強い)

追記(後輩向け)

若いうちは、転職に失敗しやすい傾向がある。
病院に求める条件が多い時期でもあり、経験も浅いために、採用で不利になることもある。

若い時ほど、人材紹介に頼ってみるのが良い。
「経験少ないのに」「私なんかが」「迷惑じゃ」と、気後れする必要はまったくない。

実際、人材紹介を利用する看護師は、20代30代が一番多い。
人材紹介側としても、若い看護師を歓迎しているらしい(若さは武器)

ただし人材紹介は中小零細よりも、大手がいい(失敗したくないなら)

どんな病院があり、自分がどこで求められていて、どこが自分に合うのか?
これは色んな職場で働かないと分からない。

でも経験豊富な担当者なら、的確な助言をくれる。

まずは相談してたらいい。

こんな記事も参考にどうぞ。

看護師が転職で失敗しないための準備マニュアル
大損してた!看護師が知っておきたい残業代のこと
看護師を辞めるのはちょっと待ってください!