「NICUで働いてみたいな」と思っている皆さん、こんにちは。
NICUに興味をもっていただいて、ありがとうございます!
あなたはどうして、NICUに興味を持ちましたか?
・新生児が可愛いから
・命の尊さを感じられるから
・ドラマ「コウノドリ」を観て感動したから
理由はそれぞれですね。
でも、NICUの看護師には辛い事もたくさんあります。
新生児が亡くなってしまったり、両親から怒りをぶつけられたり、勤務中は神経を張り詰めていなければならなかったり……。
じゃあ、憧れだけでNICUにいくのはやめたほうがいいのでしょうか。
NICUを目指すなら、実際の仕事内容や辛い事も理解してからにしましょう!
もちろん大変な事はたくさんありますが、新生児は可愛いし、小さな命を守るという仕事はとてもやりがいがありますよ。
NICUとは?
NICUは、新生児特定集中治療室と呼ばれ、新生児のための集中治療室です。
NICUは「総合周産期母子医療センター」「地域周産期母子医療センター」「新生児ケアの施設を持つ病院」などに設置されています。患児は生後間もなくから入室し、長いと半年ほど治療を受けます。
看護師から見れば、専門性が高く敷居が高いと思われがちですが、産休や育休などでブランクがあっても勤務している看護師は多くいます。
看護師が働く場合は、公立病院と民間病院に分けられます。(一部の独立行政法人は、公務員ではなく、民間病院と同じ非公務員となります)
項目 | 評価 | 一言コメント |
---|---|---|
児の状態 | 重度 | 生後まもなく医療介入が必要な未熟児、低体重児など、処置が必要な児や、先天性心疾患、呼吸窮迫症候群などの術後の児。 |
給料 | 約25万~29万 | 初任給。大都市と地方でもあまり差はない。 |
福利厚生 | △ | 公務員は年金払い給付金があり、育休も最大3年まで延長できる。非公務員は雇用保険に入り、育休は最大1年半まで延長できる。 |
夜勤 | あり | 2交代制の場合、「1か月72時間ルール」の適用外になる。1ヶ月の夜勤が6回を超えることも多い。 |
土日出勤 | あり | |
求人数 | △ | ほとんどが病棟勤務としての募集。院内の欠員状況に左右されるので必ずしもNICUに配属されるわけではない。 |
正社員 | ○ | ほぼ正社員。 |
パート・アルバイト | × | 稀に「NICU職員募集」と、代替職員を緊急で募集することがある。 |
求人情報 | △ | 一番情報が豊富なのは転職サイト。病院のホームページ、求人誌、ハローワークでも公開されるが「病棟勤務」としての募集。 |
仕事の難易度 | 中度 | 手技はない。産科や小児科の勉強も必要。精神的には辛いが、記録や処置の際にも部屋移動は少ないので、体力面はかなりラク。 |
スキルアップ | ◎ | 助産師資格や新生児集中ケア認定看護師を目指せる。常に最先端の機器を導入しているので、触る機会に恵まれる。 |
子育てママ | △ | 夜勤が必須のため、子育てママには難しい。 |
新卒 | × | 急変が起こりやすく、緊急事態の対応が必要になるので難しい。手技が無いため、点滴や注射のスキルを付けることができない。 |
ブランク | ○ | 産休明けに配属されることもある。急変を見抜く観察スキルが重要なので、手技のスキルが不安でも差し支えない。 |
小児未経験 | ○ | 産科急性期の経験者が良い。ただし、成人看護経験が通用しないことが多々ある。 |
NICUの仕事内容は?
NICUの仕事は、リスクを持って生まれた新生児たちへの看護です。これらの新生児たちは、医療の介入がないと生きられません。
患児の年齢は、生後間もなくから数か月です。重症度が高い場合は、1年近く滞在することもあります。
また、他の助産院や産科で生まれた新生児を受け入れることもあります。
患児は、胎児期からハイリスクで生まれる診断を受けていることが多いです。そのため、出生時には産科と新生児科の連携により、生後すぐにオペや処置をして、NICUで予後を観察します。
看護内容は、基本的に一般の小児科病棟と同じです。異なるのは、一般的な手技を医師が行うため、採血・点滴といった処置をしない点と、母親へのケアも必要なことです。
また、患児は、ちょっとした刺激でも急変を起こしかねません。看護師は、非常にこまめで繊細な観察・対応スキルが求められます。
- 出来る限り母乳(リスクのある児には最適)をもらい、決まった時間にチューブにシリンジで注入する、授乳管理への対応。
- 人工呼吸器、心電図など、さまざまな機械を装着しており、こまめなチェックが必要な、機械管理への対応。
- 薬は1ガンマ(1グラムの100万分の1)単位です。患児の命に直結するため、ミスが許されない、薬液管理への対応。
【主な例】
いずれの場合も患児の状態はもちろん、母親へのケアも重要になります。
看護師は、両親へ状況の報告や、今何ができるかをアドバイスして、患児と共に前向きになってもらうことが必要です。父母に触れ合わせ、親子であることを体感してもらうのも、家族になった実感を持ってもらうためには大切なことです。
NICUの看護師はどんな人?
集まった看護師は、新生児の急変を見抜くため、一般の小児科病棟と比べて判断力が非常に高く、特に異常を察知する力が飛び抜けています。
また、「母親代わりに患児の命を守る」意識の強い看護師が多く、カンファレンスで医師に意見したり、医師の指示を再確認します。例えば、カンファレンスで医師が「○○のチューブはそろそろ外しても問題ないと思う。」という発言に対して、「○○が安定していません。まだ無理です。」と反論することもあります。
薬液の量も必ず検算します。薬によっては「○倍希釈が暗黙の了解」になっていますが、そのことを知らない研修医が原液のままの量で投与の指示を出すこともあるからです。
患児がNICU入室中は医師や他の看護師との連携、NICU退室の際は、小児科医と連携しながらの看護になるので、幅広い知識を身に付ける必要があります。そして、月に一度は勉強会が開かれますので、日々の業務を振り返りながら参加します。
自分が高度な知識を付け、学んだ看護を実践していくことで、少しずつ、自分で助けられる患児が増えて行くのです。その結果として「自分が患児の命を守る」意思がさらに強くなり、認定看護師や助産師を目指す看護師もいます。
しかし、患児の小ささを目の当たりにして、メンタル面で参ってしまったり、繊細な看護を苦痛に感じて去っていく看護師もいます。
- 「患者が未熟な上に、重症度や緊急性が高いため、インシデントやアクシデントが怖くて看護できない」理由での退職。
- 患児の病気や障害の程度により、親が子どもの治療を拒否することが珍しくないです。親に説得を試みても許可を得られず、何の治療もできないまま患児を看取ることもあり、無力感からの退職。
- たとえ命を救えても植物状態になる患児もいるため「果たして救ったことに意味はあるのか」と精神を病むことでの退職。
【主な例】
このように、NICUは「子どもの命を守りたい看護師」の割合が高いため、入職した看護師も母性豊かになっていきます。その一方で細かさや煩雑さ、消えてゆく命の多さに耐えらず辞める看護師も多く、離職率は高い傾向にあります。
NICUのメリットは?
NICUにはベテランの看護師が集まってきます。ベテランの集団の中で働くと、自分の判断力も自然と上がっていきます。
NICUは、一室の中で医師や看護師が患児を見守るため、他科にない一体感があり、患児の急変にも素早く対応できます。また、最先端の機器を導入しており、高度な技術が身に付きます。
NICUで5年働けば、早い人は一人前になるほか、助産師資格や新生児集中ケア認定看護師も目指せるようになります。特に、助産師の資格を取れば、産科に異動できるようになりますし、昇給も見込めます。助産師を募集している病院も多く、資格取得の後押しが期待できます。
高い判断力を持つようになれば、患児の健康管理や的確な薬剤投与はもちろんのこと、インシデントやアクシデントの防止につながります。経験を重ねることで自信がつき、モチベーションも高められるでしょう。
大きなスキルとしては、人工呼吸器の装着や心電図を読める技術が挙げられます。これらのスキルは身に付けられる科が限られており、将来、結婚や出産などで転職・復職する際も、重宝されるでしょう。勤務先としては、小児科や小児専門病院、小児科クリニック、小児病棟、児童福祉施設などがあります。
NICUのデメリットは?
NICUでは、緊急事態の判断力が要求されるため、ついて行けなくなる看護師もいます。
ベテランの集団の中では、少しの変化でも、「異変に気付いて当たり前」という空気が流れます。しかも、新生児は小児以上に急変が早いので、常に雰囲気がピリピリした中で勤務をしなければなりません。
また、作業が思うように捗らないのも日常です。バイタルチェックの時に泣かれると、やり直しになりますし、母親への母乳指導も結構負担になります。母親は、母乳が出ないと「なんで産んだんだろう」「母親失格」などと、思考がネガティブになりがちです。
さらに、重症児が多いため、インシデントやアクシデントが起こる確率も他科より高いです。インシデントとしては、「二重チェック」をすり抜け、薄めるべき薬を原液で投与したり、母乳間違えを起こしたりすることもあります。そんな時は、両親と医者や看護師の複数から責められることになり、自己嫌悪に陥ることがあります。
NICUでは、成人と違い、患児の個性がハッキリしていないため、患児を一人の人間としてではなく、症例でしか見られなくなってくることがあります。
そのうえ、手技を医師が行うため、看護師は採血・ルート確保といった処置をしません。他科の看護師なら当たり前に身に付くスキルを学ぶ機会が無いので、他科へ転職したくなっても、選択肢が手技を必要としない科に限られてきます。
まとめ
NICUは、チーム医療を学びたい看護師にオススメの職場です。
入職して間もなくは、未知の領域への戸惑いやパニックが起こるかもしれませんが、先輩のフォローのもと、落ち着いて仕事をこなしてください。また、ベテランの看護師や医師と共に働けますし、助産師や小児科医との連携が必要な場合もあります。その際の処置も学んでいくので、専門的な看護ができるようになります。
しかし、患児が両親に受け入れられない場合は、本来救えるはずの命をなすすべもなく看取るしかない時もあります。インシデントやアクシデントの確率も多いので、ものすごくプレッシャーのかかる現場ではありますが、1つ1つ医師や看護師に質問しながら自信につなげていってください。
高齢出産や不妊治療の末に授かる子供は多く、低体重児や障害児を妊娠する確率が高いため、NICUが必要な患児は増え続けています。したがって、これからも、新生児の疾患の割合は上がり続けていくでしょう。
是非、あなたのチカラでNICUの患児を助けてあげてください。
※追記
「一般病棟の小児科も気になる!」という方は、こちらの記事に分かりやすく書かれています。
看護師が小児科に転職するなら知っておきたいポイント
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NICUは助産師が有利?
大きな病院では、スタッフが全員助産師のところもあります。NICUでは、母体と新生児両方のケアが必要になるため、看護師よりも助産師が求められる確率が高いです。
NICUの勤務が難しければ、産科で勤務してから助産師免許を取り、NICUへ転職する方法もあります。産科から転職の場合は、母親への指導が必要なため、おっぱいケアを経験している看護師は喜ばれます。
NICUに転職するためのコツ&ポイント
総合周産期母子医療センターは約100カ所、地域周産期母子医療センターは約290カ所あります。NICU増設のために看護師を募集している病院もあるので、ホームページをこまめにチェックしてください。
採血やルート確保を看護師に任せる病院もあります。手技を磨きたければ、入職時に確認しましょう。日勤のみが叶う病院もあるかもしれません。子育てママは問い合わせてみましょう。
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