看護師が小児科病棟に転職するための全知識

小児科病棟って、看護師に人気ですよね。

子どもが大好きだから、
子どもと関わることが楽しいから、
子どもの笑顔が見たいから……
小児科病棟で働きたい!と思います。

でも、どんなに子どもが好きでも、業務が煩雑で同じ仕事の繰り返しに耐えられず辞めてしまう看護師もいます。

小児科病棟で働いていくには、どうしたらいいのでしょうか。

必要なのは、小児科病棟の特徴や仕事をしっかりと理解しておくことです。
小児科病棟で働くために必要な心構えやメリット、デメリットを具体的な仕事内容から考えてみましょう!

きっと、小児科病棟で楽しく働けるようになりますよ。

小児科病棟とは?

小児科病棟の数は全国で約750ありますが、約半数の病院が東京・大阪・愛知・福岡などの大都市部に集中しています。

患児は0~15歳(中学生での初診を除く)が対象で、比較的軽症の短期入院が多いです。また、患児は成人よりも急変が頻繁なことから、看護師は急性期の経験者が望ましいです。

看護師が働く場合は、公立病院と民間病院に分けられます。(一部の独立行政法人は、公務員ではなく、民間病院と同じ非公務員となります)

項目 評価 一言コメント
児の状態 中度 急性上気道炎や喘息、けいれんや髄膜炎、麻痺などの児。
給料 約23万~35万 初任給。大都市と地方でかなり差がある。
福利厚生 公務員は年金払い給付金があり、育休も最大3年まで延長できる。非公務員は雇用保険に入り、育休は最大1年半まで延長できる。
夜勤 あり
土日出勤 あり
求人数 小児科のある総合病院、大学病院に入職して、小児科への配属を出して、異動を待つ。
正社員 ほぼ正社員の募集。
パート・アルバイト バートの募集もある。
求人情報 転職サイト、求人誌、ハローワーク、病院のホームページで公開される。パートの情報は転職サイトが一番多い。
仕事の難易度 中度 他科と比べ、専門性が高い。薬量も体に合わせた計算が必須。
スキルアップ 小児看護専門看護師や小児救急看護認定看護師を目指せる
子育てママ 24時間利用可能な空きがある保育施設を病院が持っており、家族の理解が得られれば可能。
新卒 小児科を目指す看護師は多いため、配属の可否は病院の状況による。
ブランク 小児科経験者なら歓迎されることもある。
小児未経験 専門性が高いため、歓迎されない。ただ、急変対応が必要なので、急性期の経験があれば可能。

小児科病棟の経験はクリニックの転職にも役立ちます♪nekonarse-shiji

小児科病棟の仕事内容は?

小児科病棟の仕事は、急病の子どもたちへ看護です。

急病の子どもたちは、医師の観察が必要なため、入院します。患児の年齢は0歳から15歳くらいまでで、短期入院を繰り返すこともあります。8割近くが5歳未満で、特に乳幼児が多いので、病状を聞くためには、付き添いの母親とのコミュニケーションが必須になります。

主な症状は発熱、呼吸困難、けいれんなどです。入院は平均10日で、短いと3~4日のこともあります。長くても一か月くらいです。深夜の入院が多いので、緊急対応が求められます。

患児は急に病気になりますが、回復も早いので、突然入院して数日で退院となるケースが多いです。

看護内容は、子どもと親へのケア、注射や採血などの処置、回診の介助などです。検査があるときは他部署と連携を取り、患児を検査室まで送迎します。

また、病気に立ち向かってもらうため、子供のストレスや不安の解消にも努めます。

    【主な例】
  • 短い入院期間の中でもできるだけ病室へ行き、患児に顔を覚えてもらえるようにします。信頼関係を築く対応。
  • 患児の好きなキャラクターの話をして和ませます。慣れない病院の生活への恐怖心をやわらげる対応。
  • 短い期間の中でも患児は成長しています。患児が笑顔であいさつしてくれたら褒めたりします。できたことの成長を見逃さない対応。

いずれの場合も、患児だけでなく、母親へのケアも重要です。特に母親は、入院に至るまでの数日間、自分で様子をみているため、疲れ果てています。そのため、患児と共に受診を促すことも珍しくありません。

小児科病棟の看護師とはどんな人?

小児科病棟には、一般科以上に情熱のある看護師が集まってきます。集まった看護師は、基礎的な看護技術を持っており、アセスメントや手技に自信があります。

また、「異動や転職でやっと入職が叶った」看護師が多く、小児看護に対して気合が入る傾向があります。たとえば、成人と小児では医療器具の大きさが全く違い、薬液の量も体重に合わせて計算します。すべてが小さく、細かく感じるものですが、違いをものともせずに意欲的に学びます。

そして、勉強会やセミナーにも積極的に参加し、専門性を高める努力をします。さらに、短期の入院でも「あの病院楽しかったな」「看護師さんとの触れ合いが嬉しかった」と思ってもらえるような対応を心がけています。

その結果として、「小児分野を極めたい」意思が強くなり、小児看護専門看護師や小児救急看護認定看護師を目指す看護師もいます。

しかし、患児と過ごす時間が短いことや、処置の面で現実とイメージのギャップに耐えられずに去っていく看護師もいます。

    【主な例】
  • 患児と接する時間がく、「思ったよりしっかり看護ができない」という理由での退職。
  • 病状の悪化で、重篤になった患児には転院してもらうため、「患児のチカラになれなかった…」と、無力感を感じての退職。
  • 成人とのギャップが解消できず、「細かすぎてインシデントやアクシデントを起こしそう」と、ついてこれない看護師の退職。

このように小児科病棟は「必死に学ぶ看護師」の割合が高いため、入職した看護師もアセスメント能力が高まっていきます。そして、患児にも笑顔を見せる余裕が生まれ、優しい雰囲気になっていく人が多いです。

その一方で、業務が煩雑なうえに同じ仕事の繰り返しで耐えられないと去っていく看護師も一定数います。

小児科病棟のメリットは?

小児科病棟には、優しい看護師が集まってきます。

優しい集団の中で働くと、自分が提供する看護も自然と優しくなってきます。小児科病棟で3年働けば、あらゆる症状を看ることになるため、全身状態の把握ができるようになり、専門的な知識や看護スキルも身に付きます。

そして、月一度の勉強会を通して自ら腕を磨けば、小児看護専門看護師や小児救急看護認定看護師を目指せるようになるので、一層のスキルアップが叶います。

付き添いの母親がいてくれるのも助かります。しかし、一般的に小児科では、母親への対応が難しいイメージがあります。経験が浅いうちは、緊急入院してきた患児のアセスメント面で太刀打ちできないときがあるかもしれません。

ですが、医療処置以外の面では、得るもののほうが大きいです。例えば、食事やおむつ介助をお願いできますし、バイタル測定時に患児が暴れても、午睡に入る時間を教えてもらって再度測定の時間を調整するとか、協力が仰げます。

そして、母親の直感も頼りになります。過去、「なんか変です」と聞いてから、実際に発作が起こったがありました。もちろん、鵜呑みにはしませんが、参考にできます。

小児科病棟では、回復する患児が多く、ステルベンが少ないです。子どもの成長と適応は早いので、驚かされます。初日泣いてた子が次の日笑ってくれたときは成長や適応力の高さを感じます。

このように、専門的なスキルを付けながら、コミュニケーション能力も鍛えられる現場です。将来、転居や結婚などで、転職・復職することになっても、小児科クリニック、小児専門病院、小児病棟、児童福祉施設など、小児に関わるいろいろな場所での勤務が叶います。

小児科病棟のデメリットは?

小児科病棟では、優しい看護が要求されるため「子どもの苦痛は和らげて当たり前」という雰囲気になります。

しかも、看護師の人数が少なくて、時短的余裕がないため、引継ぎのカルテでしか患児がどういう子かを知ることができません。だから、どうしたら苦痛が和らぐのか悩むことが多いです。

また、病棟は不特定多数の出入りが自由なので、誘拐のリスクもあります。共働き家庭も多いですが、付き添いがないと入院が成り立ちません。そのため、家族間で協力をしてもらい、子どもにつきそってもらうように説明することも必要です。

忙しいなかでも、疲れ果てた母親へのケアも怠れません。立ち話だとしっかり話を聞いていないような印象になるので、部屋へ出向きます。お母さんの目線に立って思いを引き出す努力をする必要があります。

患児が一見元気そうになると、「もう退院できるのではないか」と疑問をもつ母親もいます。子供が苦しいのを理解してもらうため、診器で胸の音を聞いてもらい、「こんなにヒューヒュー、ゼーゼー、苦しそうな音がする」と、親に体験してもらうこともあります。

患児は回復が早いですが、悪化するのも早くて急変しやすいため、どうしても激務になってしまいます。入院時は子供が不機嫌で泣くのであまり観察ができません。

そして、入れ替わり立ち代わりの入院があり、細かいところまで看ることもできないです。「点滴がちゃんと入ってる」「呼吸してる」を確認して、ルーティンで終わってしまいます。常に忙しいため、入退院時にしか関われず、退院時に挨拶されても「あの子、だれだろう?」という印象を抱くことも少なくないです。

小児科は専門性が高いため、小児科以外に転職したくなっても、応用が利かず、勤務先が限られてきます。

まとめ

小児科病棟は、コミュニケーションを学びたい看護師にオススメの職場です。

成人を看ていた看護師は、器具から備品まで、あらゆるものの大きさに慣れるための時間がかかるかもしれません。疾患に関しては、急性上気道炎、喘息など、呼吸器性疾患が多いので、呼吸器系から覚えていき、徐々に全身の状態を把握できるようにしていきましょう。

小児科病棟は、流れるように入退院が繰り返されます。どうしても患児や家族と関わる時間が限られてきますし、同じことの繰り返しで充実感も無く、患児を看るにも「呼吸してるからいいか」と、丁寧にケアできない傾向はあります。

できるだけ、母親と上手にコミュニケーションを取って協力してもらい、丁寧なケアを心がけていくと良いでしょう。実践している看護ケアの意味を再確認しながら、より高い看護が提供できるうように頑張ってください。

小児科病棟にあなたのチカラを貸してください。

小児科病棟に関するコラム集

入職のコツ&ポイント

  • 季節によって患児の数の増減が激しいため、総合病院では内科や他科と複合しての配属になることが多いです。
  • 小児科は非常に人気が高いため、新卒でも希望を通すのは難しいと思っていたほうがよいでしょう。
  • 小児科単科で働きたいなら、大学病院の専門科、小児専門病院や子ども病院への入職がおススメです。
  • 未経験で転職したい場合は、求人サイトを使い、公開されていない求人を狙うのが手です。
  • シングルマザーでも寮や託児所が完備されていれば勤めやすいので、病院に問い合わせてみましょう。

転院の判断基準がわからない

看たことのない症例で、医師が家族に、「副作用が出るかもしれない、サイアク死亡もありうる」と説明するとき、「この病院で看れるのだろうか、他へ転院してもらったほうがよいのでは???」と思います。

しかし、判断基準がないので、思っていても言葉に出せないジレンマがあります。

小児科医はどのくらい不足しているの?

いま、小児科医の不足が騒がれていますが、人口10万人に対して医者の数は約11人です。日本の小児科医の数自体は他の先進諸国に比べても、決して少なくないのです。

  • では、なぜ小児科医が不足しているのでしょうか。
    それは、小児科を設置している病院の数が少ないからです。「小児科医」が少ないのではなく、「小児科を設置する病院」が少ない(減っている)のです。
  • では、なぜ小児科を設置する病院が減っていくのでしょうか。
    それは、小児科は赤字部門だからです。まず、子どもの処置をしようとすると、泣くわ、暴れるわで大人の何倍も手間も人件費もかかります。どうあがこうと、赤字になるのは必至なのです。

じつは、勤務医の小児科医は増えていますが、特定の病院にだけ配置しているため、医師が一部の病院に集中してしまい、特に中小規模の病院での小児科医が不足しています。赤字になるために病院の経営が成り立たなくなり、小児科が廃業に追い込まれるなら、診療報酬を充実させる必要があるでしょう。

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