看護師が小児科クリニックに転職するための全知識

小児科看護師の働く姿

小児科クリニックへ転職したい看護師のみなさん、こんにちは。

「子どもってかわい~!」
「大好きな子どもに囲まれて仕事がしたい~!」
「看護師さんありがとうって言われた~い!」

実際、こんな理想を抱いて転職した看護師をわたしは何人も見てきました。ところが、そのほとんどが1年以内に辞めてしまっています。
それは小児科クリニックの表のイメージだけで転職するからです。ここには、小児科クリニックの表も裏もすべてが書いてあります。すべてを知った上で転職を考えてみてはいかがでしょうか。

小児科クリニックってどんなところ?

転職するなら「待遇」「特徴」「求人状況」の3つを押さえておきましょう。
では、さっそく見ていきますね。

小児科クリニックの待遇

まずは、気になる待遇からです。

項目 評価 コメント
給料 23~28万 他の診療科と比べて、高くもなく低くもなく。ただクリニックがアレルギー科や耳鼻咽喉科など、他の科と一緒になっていると、給料が高くなる傾向にある。
福利厚生 看護師を必要最低限の人数で雇用している施設が多く、急な休みは取りにくい。時期がずれることもあるが、年末年始・盆・GWなどはクリニック自体が休診となるので、長期休暇がとれる。
夜勤 なし
土日出勤 あり 月~土曜は勤務で、日祝休みのクリニックが多い。
残業 ところにより、残業がある。

他のクリニックとほとんど変わらない勤務体系です♪nekonarse-shiji

小児科クリニックのその他特徴

続いては、小児科の特徴です。(あとで詳しく説明しますね^^)

項目 評価 コメント
子供の状態 軽度 予防接種をしたい児や風邪など、軽症の児
仕事の難易度 高くはない ただし点滴、採血があるクリニックだと処置のスキルが必要になる。
スキルアップ 看護スキルは身につきにくい。

クリニックは病状が軽いため、特別なスキルは必要ありません。nekonarse-shiji

小児科クリニックの求人情報

最後に気になる求人状況です。ザックリ確認しておきましょう。(詳しくはのちほど!)

項目 評価 コメント
求人情報 一番情報が豊富なのは転職サイト。求人誌、ハローワーク、病院のホームページでも公開されるが、数は少ない。
求人数 人気のため少ない
正社員 専門性が高いため、経験を考慮し正社員にもなりやすい
パート・アルバイト 正社員より少ないが、パートや派遣の募集もある。
新卒 × クリニックは即戦力が求められるので、新卒採用は少ない。
ブランク ブランク歓迎のところも多数ある。子育て経験者は歓迎される。
小児未経験者 小児未経験であっても、特に問題はない。

求人数は少ないですが、転職にはもってこいですね♪nekonarse-shiji

ザックリわかっていただけたところで・・
もう少し小児科の具体的な部分に触れてみたいと思います。

小児科クリニックの仕事内容は?

小児科クリニックでの看護師の仕事は大きく分けてこの4つ!

  • 診察の介助
  • 保護者の対応
  • 予防接種の調整
  • 雑用

順にみていきましょう。

1.診察の介助

医師の診察介助においては、一般的なクリニックとほぼ同じです。
ただし、相手が子どもという点が異なります。0歳児~12歳ぐらいまでが対象ですからね。
そのため、成人と違い診察が思うように進まないこともあります。

とくに子どもにとって「診察室」は「怖い場所」です。
何をされるかわからない不安から、診察を嫌がることもあります。
・泣き止むまでに30分かかった!
・診察室から逃げ出してトイレに籠って水をジャンジャン流していた!
なんてこともあります。(そりゃイラっとしますよ。でも、許せちゃうんですよね。)

ここは、看護師の腕の見せ所。
さまざまな月齢、年齢の子供の発達段階に応じてプレパレーションします。
4,5歳までの小さな子どもには、おもちゃで注意をそらしたり、手を握ったり。
また、小学生になると、人形を使って丁寧に説明したり。
子どもは素直ですからね。一瞬で涙が笑いに転じますし、そのあとケロッと受診してくれます。
もちろん、「頑張ったね!」「できたね!」と褒めることも忘れてはいけません。
達成感を味わせてあげることで、次回からは意外とすんなり受診してくれたりしますから。(ニンマリ)

とくに最初は、子どもの対応にオロオロすることがあるかもしれません。
でも、何度か経験するうちに自然と慣れます^^
必死になだめて何とか診察を終えた子どもの笑顔には本当に癒されます。小児科の醍醐味ですね。

2.保護者の対応

子どもにはもれなく保護者がついてきます。これは、一人で受診する成人科と大きく違う点でもあります。小児科で働くなら、子どもだけでなく、保護者との関わりも大事な仕事の一つとして理解しておきましょう。

診察前のアナムネは看護師が行いますが、患児が話せない年齢、話せてもうまく伝えられない場合はどうしても保護者から聞き取りをします。
ただ、保護者は子供の体調不良で不安や焦りを抱き、普段より神経質になっていることが多いです。そのため、看護師の何気ない言動が保護者の怒りスイッチを押してしまうことも。
保護者からの話は治療をする上でも重要な情報になるため、看護師は保護者の不安な気持ちを理解し、配慮した関わり方を心がけましょう。

保護者の対応に不安を感じている看護師は多いかもしれません。でも、1度通じ合えると最強の味方にもなってくれます。こちらが丁寧に対応すれば、保護者の方から心を開いてくれるようになりますよ。「子どもを助けたい」という強い気持ちでつながっている分、関係も築きやすいんです。

3.予防接種の調整

小児科では病気やけがの治療以外に、予防接種目的の子どもも受診します。
予防接種は月齢や年齢に応じて接種時期や期間が決められています。1歳~3歳までは特に予防接種のスケジュールが込み合っており大変ややこしく、「次は何を接種したらいいの?」という問い合わせもよくあります。
予防接種の種類や接種時期、回数などをきちんと整理しておく必要がありますね。
また、インフルエンザの予防接種期間(10月~12月)は繁忙期です。予約の受付や、待合室の対応など、慌ただしくなることも把握しておきましょう。

雑用

その他には、雑用業務が意外と多く入ってきます。

・診察受付
・診察室の掃除
・待合室の飾りつけ

小児科クリニックでは、キャラクターのイラストやかわいらしい壁飾りがしてありますよね。
待合室だけではなく、診察室、トイレ、処置室、感染者用の個室に至るまで、あらゆる場所にかわいい装飾が目に留まります。季節ごとに装飾を変えたり、流行りに合わせて作り変えたりもしています。
「それ、看護師の仕事なの!?」と思う方もいるかもしれません。
でも、子供が安心できる雰囲気作りは大事な仕事の一つなんです。それに、看護の合間に飾りつけが入るだけで、意外と気分転換になったりするんですよ。
(ポケモン書くだけで喜んでくれますからね。保育士さん気分で楽しいですよ。)

看護師の仕事には、子どもの対応、保護者の対応、予防接種の調整、雑用まで行うことが分かりました。ではそんな小児科クリニックで働く看護師ってどんな人がいるのか見ていきましょう。

小児科クリニックで働く看護師はどんな人?

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小児科クリニックには子ども好きの看護師が多いと思っていませんか?
そんなことはありません。
実際は、子ども好きというより、「子どもの扱いに慣れている」人が多いです。
にこにこ笑顔の人懐っこい子どもばかりではありませんからね。
むしろ、体調不良で機嫌が悪い子、人見知りでぎゃん泣きの子、初めての場所で怖がっている子がほとんどです。

ところが、「かわいいイメージ」だけで転職してしまうと、「こんなはずじゃなかった・・。」と、ギャップに悩んで辞めてしまうことも。
そのため、育児の経験がある人、子ども相手に冷静に対応できる人が求められますね。
確かに、育児の経験があると、保護者と同じ立場から共感やアドバイスができるため、信頼関係も築きやすくなりますね。
でも、子育て経験がない人も安心してください。子どもの対応は経験と共に身についていくものです。大事なのは、子どもに対して良いイメージだけを持ち過ぎないということです。

さて、次は小児科クリニックで働くメリットをみていきましょう。

小児科クリニックで働くメリットって?

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小児科で働くメリットを3つ挙げてみました。

  • 幅広い知識が身につく
  • 親を味方にすると仕事が楽
  • 子供の死から遠い職場

幅広い疾患の知識が身につく

対象が「小児」のため、取り扱う疾患は幅広いことがわかりますね。診療科が器官別に枝分かれしている成人科と大きく違う点でもあります。
さらには病気だけでなく、ケガや皮膚、目、耳のトラブルで受診する子どももいます。中には離乳食の相談や育児相談で受診する方もいるくらいです。
最近はメンタル面の治療が必要な子どもが増えており、幼稚園や小学校など発達段階に応じた対応が求められます。
子どもは大人に比べて症状が分かり辛かったり、自分で説明できない場合がほとんど。そのため疾患の知識と合わせてアセスメント能力も身に付きます。

親を味方にすると仕事が楽

小児科病棟の場合、点滴の自己抜去やベッドからの転落、転倒ということに非常に気を使います。付き添いが四六時中必ずいるとは限りませんからね。
しかしクリニックでは、どんな年齢の子でも親がぴったり子供に付き添います。もし点滴指示が出ても、「終わったら教えてください」って伝えてあとは親にお任せできちゃいます。もちろん、途中何度か様子は見に行きますけどね!

子供の死から遠い職場

小児科クリニックには基本軽症、軽度の患児しか診られません。
もし重症の患児が受診した場合、医療設備の整った大きな病院を紹介します。その中でも緊急度が高い場合は救急車を呼びます。
子ども好きからしたら、子どもの死なんて想像を絶する辛さでしょう。一般的にも子供の死というのは、例え自分の子でなくても受け入れがたいものです。
クリニックはそういった悲しみから少し遠いところにあると言えますね。

では次にデメリットをみていきましょう。

小児科クリニックで働くデメリット

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続いて、小児科で働くデメリットを3つ挙げてみました。

  • 採血や点滴技術が求められる
  • 残業が多い傾向
  • 転職が難しい

採血や点滴技術が求められる

大人の血管に比べて子供の血管は細いため、その分、穿刺技術が求められます。
とくに脱水の子どもへの点滴は要注意!
血管内の水分が少ない分、更に血管が細くなりますからね。血管を探すのがかなり難しいんです。
その上親の目があるので、やりづらいんですよね。「失敗しないでよ!」と親の不安をヒシヒシと感じながら、必死に血管を探すっていう・・・。
どうしてもプレッシャーが辛いときは、冷静さを取り戻すために、一旦退出してもらうこともあります(汗)
でも、子どもの血管を攻略できれば、もう怖いものはないですよ!大人の血管がめちゃめちゃ太く見えますよ。そのため、デメリットではありますが、乗り越えれば穿刺技術のスキルアップにつながります。

残業が多い傾向

先ほども言ったように、相手は子供ですからスムーズに診察がすすまないこともあります。
暴れる、泣きわめく、かたくなに診察を拒み続ける・・・。
一人に時間がかかりすぎると、次の診察がどんどん遅れてしまいます。
その結果、待合室の子どもはぐずりだし、親もイライラの悪循環。さらに時間が押して残業確実・・・ということになります。

転職が難しい

小児科は他の科に比べて転職が厳しいです。
理由は3つ。

1.求人が少ない
2.求人が出てこない
3.競争率が高い

1.求人数が少ない
小児科求人の全体数が減少しています。
少子化や医師不足により、小児科自体が減りつつあるからです。
住んでいる地域によっては、なかなか求人が見つからないこともあるでしょう。

2.求人が出てこない
小児科に転職した看護師は、なかなか辞めません。
成人科にはない子どもたちの反応や笑顔の魅力を1度味わってしまうと、他の科なんて考えられなくなっちゃうみたいですね。その結果、求人が出にくくなるわけです。

3.競争率が高い
求人数が少ない上に、人気が高いため、自然と競争率は上がります。
そのため、1つの求人枠に対して、複数の応募者がバッティングすることが多く、内定をもらいづらいことも。
確実に転職を成功させたければ、それなりの対策を打っておく必要があります。

けど、転職に興味がある・・どうしたら?

小児科の場合、「転職したい」と思っても、すぐに転職できるとは限りません。
そのため、いきなり転職活動するよりも、小さく動いて様子を見た方が良いでしょう。
ガッツリ転職活動したせいで、職を失うなんてことだけは避けたいですからね。

具体的には、3つステップがあります。

1.転職サイトに登録する
2.待つ
3.吟味する

1.転職サイトに登録する
先ほども言ったように、常に求人があるとは限りません。
実際、不定期に出ることが多く、その数も少ないため、まず登録して様子を見る必要があります。
(宝くじ方式ですね。買わないと当たりませんからね^^;)

2.求人が出るのを待つ
求人が出る時期は、1年で4回あります。
4月(年度の始まり)
7月(夏のボーナス支給後)
9月(期の変わり目)
1月(冬のボーナス支給後)
この他にも不定期に出るため、転職サイトから送られてくる求人紹介のメールを確認しておきましょう。

3.求人を吟味する
送られてきた求人を確認し、希望に合ったものがあるかチェックしましょう。

「あなたの条件は?」
1.給料(手取り○○万以上?)
2.勤務時間(日勤のみ/夜勤OK?)
3.休み(有給取得日数/年間休日120日以上など)
4.職場の雰囲気(師長の性格、人間関係の良し悪し)
5.残業の有無(実質の残業時間は?)

この他にも、気になることがあれば転職サイトにメールで返しておきましょう。
情報収集に専念して、良さそうな求人があるかどうかを探りましょうね。

色々調べた結果、「あ、良さそう!」だと思う求人があれば、その時に転職するかどうかを考えればいいのです。

まとめ

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たしかに赤ちゃんや幼児ってかわいいし、癒されます。
でもクリニックに来る子はそんなかわいい姿ばかりではありません。

看護師はだいたい怖がられるし、診察中はドクターが呼吸音を聴診するだけでも一苦労です。
良い面ばかりでなく、子どもの不安や恐怖からくる行動を理解し、冷静に対応することが大切ですね。
さっきまでぎゃんぎゃん泣いていた子が、診察を終えて帰るとき、最後に手を振ってくれただけでうれしいものですよ。そんなやりがいを感じたい人は、小児科クリニックで働くことをお勧めします。

ただし、小児科への転職は厳しいのも事実。求人数が少ない上に、求人も出にくいですからね。
仮に求人が出たとしても、ライバルが多く内定をもらうのはかなり厳しい状況に。
もし転職に興味が少しでもあるなら、小さく動いてみましょう。
まずは転職サイトに登録して、求人が出るのを待ってみる。出た求人が良さそうなら、そのときに転職するかどうか考えてみてはいかがでしょうか。
素敵な求人との出会いを応援しています!

小児科クリニックに関するコラム集

院内だけが仕事場じゃない??

保育園や幼稚園の指定医療機関だった場合、出張健診をすることもあります。

出張健診では、基本的に元気な子ばかりを相手にするので、普段とは違う雰囲気の中で新鮮な気持ちになれるかもしれません。

入職のコツ&ポイント

  • 耳鼻科やアレルギー科など、他科と一緒になっているクリニックだと、給与が高くなる傾向にあります。
  • 乳幼児のルート確保ができると、他科への転職にも有利になります。

    なぜなら、他科は成人相手が圧倒的に多く、血管は目で見えます。乳幼児の場合、糸より細くて見えない血管を探り当てなければならないので、処置は「神業」なのです。将来、成人の病棟や外来へ行っても、「注射をしすぎて細い血管しか残っていない人」にも処置ができるのです。これは、すごいことです。感動されますし、喜ばれます。

  • ところによっては、医師や先輩看護師が自ら実験台になって手技を教えてくれるクリニックもありますので、入職時に任せてもらえるかを確認しておきましょう。

感染に気を付けて!

インフルエンザやノロウイルスなどの感染症には、子どもだけでなく、大人もかかります。気を付けないと、看護師も感染します。

特に冬場に流行る感染症と言えばインフルエンザ。小児科では秋頃からインフルエンザの予防接種にくる子供が増え、徐々にインフルエンザ患児の受診が増えていきます・・・

さらに冬はインフルエンザだけではありません。ノロを代表とした感染性胃腸炎や、溶連菌感染症などの様々な感染症の患児であふれかえります。

この時期は看護師にとって、一番緊張感がある時期ともいえます。業務が忙しくなる上、自分自身もいつ感染してもおかしくない状況。

他の看護師が一人でも感染してしまえば、休日出勤間違いなし。それが2人、3人看護師が倒れれば・・・どれだけ(私が)大変なことになるか!

これが小児科クリニックの冬の風物詩だったりします。

こんな記事も参考にどうぞ。

看護師が転職で失敗しないための準備マニュアル
大損してた!看護師が知っておきたい残業代のこと
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